音楽レシピ | 「東京VICTORY」カバー音源の制作を振り返る5(ミキシング編)

目標とする周波数分布 音楽
各トラックの音色とトラック同士のバランスを整えて、理想の味付けに仕上げましょう!

Ciao!みなさんこんにちは!このブログでは主に
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の4つのトピックについて発信していきます。

今回は音楽レシピ、東京VICTORYのカバー音源制作振り返りの第5回です!
擦りに擦った「東京VICTORY」シリーズも今回が最終回、これで完結です!
音楽レシピでは、DTM音楽作成に役立つ豆知識を紹介していきます。
現在ではノートパソコン1台で本格的な音源を作ることができます。
「自分で作曲をしてみたい」、「市販のカラオケ音源では物足りないから自分で音源をつくりたい」といった方も増えてきているのではないでしょうか?

東京VICTORYのカバー音源制作振り返り第5回の今回は、楽器の周波数帯域や前後感の調整、音量調整などのミキシング作業を振り返ります!
私自身はただの素人ではありますが、参考にしていただける点もあると思います。
よければお付き合いください!

私が作成した音源はYouTubeで視聴可能です!ぜひご視聴ください!

Abstract | プラグインを使いこなしてイメージ通りの音像に

Logic Pro XなどのDTMソフトのプラグインを使いこなすことで、イメージ通りの音色・音像に近づけることができます。
前回の記事では、ボーカルの音色と音像をイメージに近づける作業をご紹介しました。
ボーカル以外の音源でも同じように音色と音像をイメージに近づけることができます。
今回は、

  • ピアノ音源を題材にした音色の加工
  • オケ全体の音像をイメージに近づけるミキシング作業

をご紹介します。

「東京VICTORY」では、ボーカル、ピアノ、ドラムが倍音の効いたアグレッシブな音色になっています。
ボーカルではEQ、コンプ、Exciterを駆使して音作りを行いましたが、ピアノでも同じようなプラグインを使って倍音をキリッと立たせることができます。
加工前後の音の比較も取り上げますので、ご覧ください!

また、ミキシングについては、細かい方法の紹介は割愛し、周波数分布のイメージや前後感のイメージと結果だけご紹介します。
楽器別の音源もご紹介しますので、聴いてみてください!



Background | ミキシングは最後の味付けと盛り付けの作業

本シリーズでは、「東京VICTORY」カバー音源の制作過程を振り返ります。
第1回では楽曲についての私なりの解釈を紹介しました。
第2回ではアレンジとレコーディングについてご紹介しました。
第3回、4回ではボーカルのピッチ修正と音色加工をご紹介しました。

第5回の今回はシリーズ最終回で最後の仕上げを行っていきます。
いわゆる、ミキシングと呼ばれる工程で、

  • 各トラックの音色の仕上げ
  • トラック同士の周波数バランスの調整
  • トラック同士の前後バランスの調整
  • トラック同士の音量バランスの調整

を行います。
お料理で言えば、最後の味付けと盛り付けのところにあたります。
ミキシングを行った後、マスタリングと呼ばれる別の工程もありますが、本シリーズでは省略します。

ミキシング工程では、各トラックの音色を理想に近づける作業を行った上で、トラック同士のバランスを録る作業を行います。
今回は、楽器トラックの音作りの例としてピアノの音作りを取り上げます。
音作り前後での音源の変化もご紹介します!

トラック同士のバランス調整については、バランス調整の際に気をつけていることをお話しながら、仕上がりのイメージをご紹介します。
最後に、イメージがどのくらい実現できているか、仕上がりの音源をご紹介します。



Method | ピアノの音作りとミキシングのイメージ

以下では、具体的なピアノの音色の加工方法とミキシングの概要を「東京VICTORY」カバー音源の例でご紹介します!
どのように加工するかは、楽曲によっても異なりますし、理想の音色像によっても異なります。
あくまでも参考として捉えてください!

ピアノの音作りの方法

まずはピアノの音の加工です。
今回はかなりアグレッシブな音作りを行っています。
第1回でお話したとおり、「東京VICTORY」はコード進行は地味ではありますが、音色としてはかなりアグレッシブで派手に作られています。
特に、ボーカル、ドラム、ピアノは倍音がキリッと立って前面に出てくるような音になっています。
そこを目指した音作りをしているため、ピアノの音作りはかなりアグレッシブにやりました。

ピアノトラックのルーティングは下図1のようになっています。
音作りはレコーディングトラックにプラグインを挿して行います。
それから、空間系のエフェクトを他の楽器と共有のセンド&リターンで付加しています。

ピアノはKORGのステージピアノD1をシングルトラックのステレオで録っています。
いわゆるライン取りです。
そもそもD1にはライン出力、イヤフォン出力、MIDI出力した出力装置がついておらず、マイク録音はできません。
D1の出音をなるべくアグレッシブにするためにTouchコントロールをデフォルトから一段階軽くしています。
Touchコントロールを軽くすると、強弱がつきにくくなりますが、倍音が付加された音になります。
レコーディングの時点で、そもそも音作りでアグレッシブに加工することを想定してはいましたが、なるべく倍音を含むようにTouchコントロールも変更しておきました。
Touchコントロールも変更はD1に調整ボタンがついているのでそれで行います。

図1. ピアノトラックのルーティング

ピアノの音作りでは、以下の4つのプラグインを使っています。

  1. Channel EQ
  2. コンプレッサー
  3. Exciter
  4. Channel EQ

1段目のEQはカット方向に使っており、ローカットに加え、ボーカルとぶつかりがちな500 Hzをカットしています。
あまりバッサリローカットを入れると、左手で弾いているベースラインが鳴らなくなってしまうので緩やかにカットします。
この少し下で鳴っているベースとなめらかに接続するイメージです。

次にコンプレッサーで、全体を圧縮しつつアタック感のコントロールをしています。
アタックが15 msと遅めなため、アタックが突き出る設定になっています。
リリースも少し長いので、やはりボディ成分を圧縮してアタックを出すことを狙っています。
ただ、動作を見てみると、次のフレーズの頭にかかってしまっているので、もう少し短くても良かったかもしれません。
レシオは3なので、ピアノにしてはやや高めで、しっかり目に圧縮しています。
ゲインリダクションは-4 dBぐらいを狙っています。

3段目のExciterは倍音付加の目的です。
音を聞いて良い感じに倍音のエッジが立ってくる設定にしています。
1のChannel EQに表示されている周波数分布(ピンク色のギザギザした線)と4のChannel EQのそれとを比べると、4の方が高周波成分が増えていることがわかります。

最終段のChannel EQは高域の倍音を強調する目的でブースト方向に使っています。
200 Hzぐらいの低域もうっすらブーストしています。
Exciterの後ろに挿すことで、Exciterで付加された倍音を強調するような働きをしています。

3段目と4段目のExciter + Channel EQがアグレッシブに働いているので
この後の結果のセクションで、加工前後の音色を比較しますので聞いてみてください!

図2. ピアノの音作りのプラグイン

ミキシングの方針

ミキシングについては、ざっくりとこんなイメージで行っているということだけお話します。
詳しく取り上げるととんでもなく膨大になってしまいます。。

周波数分布のイメージ

まずは周波数分布のイメージです。
構成楽器をざっくりと以下のように分類して考えます。

  1. ドラム
  2. ベース
  3. ボーカル
  4. コード楽器
  5. ウワモノ楽器

これらを以下のような周波数帯域に分布させるイメージでミキシングをしていきます。

図3. 各楽器の周波数分布のイメージ

このように、低域から高域まで、バランス良くトラックを鳴らし、どの帯域でも同じくらい音が鳴っている状態を目指します。
主にEQを使って、それぞれのトラックが上記のような周波数分布となるように調整します(詳細は割愛します)。
それぞれの楽器は、そもそも大体図3のような帯域で鳴っているので、基本的にはEQで余計な帯域をカットする方向で使います。

イメージとしては、以下のように考えています。

  1. ドラムのキックで低域(< 100 Hz)を埋める。
    スネアは200 Hzぐらいのところで鳴る。
    また、高域(> 2 kHz)でシンバル類を鳴らす。
  2. キックの少し上の低域にベースを載せる。
    これで低域はだいたい埋まる。
  3. ドラムとベースで作った低域と高域の土台の上に、ボーカルを載せる。
    ボーカルは中域で鳴るので、ここを空けておきたい。
  4. コード楽器でボーカルの後ろから支える。
    中域ではボーカルの後ろで鳴らしつつ、低域でボーカルとベースを接続する。
    また、中高域(1 — 2 kHz付近)に彩りを与える。
  5. ウワモノ楽器で高域(> 1 kHz)に花を添える。

複数の楽器が近い帯域で鳴ってしまうと、音が曇ってしまうため、それぞれの楽器の周波数帯域をなるべく分離します。
特に、300 Hz以下ぐらいの低域で音がかぶってしまうと、全体が淀んでしまうので、ローカットはかなりしっかり掛けています。
キック、ベース、ボーカル、コード楽器のローカットはラフミックスの時点で行うようにしています。

このイメージどおりのミックスがどのくらいできているか、答え合わせを、後段の結果のセクションでお届けします!

前後関係のイメージ

前後関係のイメージはシリーズ第2回のアレンジ編でご紹介しましたが、以下のようなイメージです。

図4. 楽器の前後関係のイメージ

周波数のイメージのときのざっくり構成楽器と楽器の粒度が合っていないので、対応を補足します。

  1. ドラム: ドラム
  2. ベース: ベース
  3. ボーカル: ボーカル
  4. コード楽器: ピアノ、アコースティックギター、エレキギター、コーラス
  5. ウワモノ楽器: シンセ&ストリングス等、その他楽器

前後関係の調整は、音量バランスに加え、アタック成分の量で調整します。
音が大きいと前に出て聞こえてくるのは当然ですが、同じ音量の場合には、アタック成分が多い方が前に飛び出て聞こえます。
要するに、抑揚が大きいほうが近く聞こえるということです。
アタック成分の量はコンプレッサーで調整しています。
アタック成分とボリュームをうまくコントロールすると、

  • 音量は小さいけれども前に出てきていて存在感がある
    アタック強め & ボリューム小さめ → ドラム、ボーカルなど前に出すトラック
  • 存在感はないけれども、たしかに鳴っている
    アタック少なめ & ボリューム小さめ → コーラスなど後ろに下げるトラック

といった調整ができます。
ちなみにアタック少なめ、ボリューム大きめはあまり使わないパターンかと思います。

前後感の調整は、今回は詳しく取り上げませんが、前回のボーカル加工の記事をご覧になっていただければ、

  • メインボーカルが前で鳴る
  • 字ハモコーラスがメインボーカルの後ろで鳴る
  • ウーハーコーラスは更に後ろから広く鳴る

というイメージが伝わると思います。



Result | ピアノの音作りの結果とミキシングイメージの答え合わせ

このセクションでは、

  • ピアノの音色の加工前後の比較
  • ミキシング後の周波数分布

をご紹介します!

ピアノの音作りの結果

まずはピアノの音作りの結果です。
こちらが加工前のピアノの音源です。

【音楽レシピ】Logic Pro Xでピアノの音色加工を行う例
ピアノ加工前

こちらが加工後のピアノの音源です。

【音楽レシピ】Logic Pro Xでピアノの音色加工を行う例
ピアノ加工後

いかがでしょうか?
加工前は、KORG D1のPiano 1の音そのままです。
中域でふくよかに鳴っており、ピアノ単体で聞く分にはこれでも十分です。
しかし、他の楽器と混ぜるには中域が強すぎるため、このままでは中域が混雑してしまいます。
また、「東京VICTORY」の倍音がガツンと効いたピアノ音色のイメージにはかなり遠いです。

加工後は、中域が減って、高域の倍音成分が強められています。
低域の基音も少し増えており、図3のコード楽器の周波数分布のイメージに近いかたちで鳴っています。

ミキシングイメージの答え合わせ

さて、ミキシングのイメージがどの程度実現できているのか、ミキシングの処理を施した後の音源をご視聴ください!
ボーカルについては前回記事でも加工方法をご紹介していますので、そちらもご覧ください。

ドラムトラックの仕上がり

【音楽レシピ】Logic Pro Xでミキシングを行う例
ドラムの仕上がり

ベースの仕上がり

【音楽レシピ】Logic Pro Xでミキシングを行う例
ベースの仕上がり

ボーカルの仕上がり

【音楽レシピ】Logic Pro Xでミキシングを行う例
ボーカルの仕上がり

コード楽器の仕上がり

【音楽レシピ】Logic Pro Xでミキシングを行う例
コード楽器の仕上がり

ウワモノ楽器の仕上がり

【音楽レシピ】Logic Pro Xでミキシングを行う例
ウワモノ楽器

楽器系トラック全体(オケ)の仕上がり

【音楽レシピ】Logic Pro Xでミキシングを行う例
オケ全体の仕上がり

ボーカルも含めた全体の仕上がり

【音楽レシピ】Logic Pro Xでミキシングを行う例
ボーカルも含めた全体の仕上がり



Discussion | 最近覚えたミックステクニック

最後に、最近インスタグラムで教わったテクニックをご紹介します。
このテクニックはMixPro Technicsさんの下記のインスタ投稿で覚えた技です。
https://www.instagram.com/p/CJ5NaVkhJWd/

タムにノイズゲートをいれることで、ボヨーンと鳴る余韻をカットすることができます。
ノイズゲートというと、エレキギターなどの生音源を録音する際に使っており、MIDI入力したドラム音源に使う発想はこれまでありませんでした。

音の立ち上がり(アタック成分)や余韻(アンビエンス成分)は、基本的にコンプレッサーのアタックタイムとリリースタイムで調整ができます。
ただ、タムの余韻のようにだらだら続いてしまうようなアンビエンス成分(アンビエンスと言うよりもはやリバーブや残響の類)はコンプだけでコントローするのは難しいです。

「東京VICTORY」のカバー音源作成でも、Aメロ1の前のイントロやBメロでタムが強く鳴るところで、余韻が残りすぎて悩んでいまいした。
そんなときに出会ったのがこのテクニックです。
テクニック適用後と適用前のドラムの鳴り方を是非聴き比べてみてください!

こちらが適用前です。

【音楽レシピ】Logic Pro Xでミキシングを行う例
タム処理前

こちらが適用後です。

【音楽レシピ】Logic Pro Xでミキシングを行う例
タム処理後

いかがでしょうか?
適用前は、タムが強く鳴った後に、「ボヨーン」という余韻がかなり長く残っており、次のフレーズを邪魔しています。
適用後では、タムは強く鳴るものの、余韻がすっきりと消えるため、次のフレーズを邪魔せず、切れのよい仕上がりとなっています!
MixPro Technichさん、ありがとうございました!



Conclusion | まとめ

最後までご覧いただきありがとうございます!
アグレッシブなピアノサウンドの作り方とミキシングについてお話しました!

Logic Pro Xを使って、楽器の音色の加工や周波数バランスの調整、前後バランスの調整といった仕上げ作業を行うことができます。
アグレッシブなサウンドにしたりマイルドなサウンドにしたり、音楽制作の幅が広がり、クオリティも上がります!
私も素人ながら、いろいろなサウンドを作っていきたいものです!

以上、「音楽レシピ | 「東京VICTORY」カバー音源の制作を振り返る5(ミキシング編)」でした!
また

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