音楽レシピ | 「東京VICTORY」カバー音源の制作を振り返る2(アレンジ&レコーディング編)

「東京VICTORYの大まかな楽器構成」 音楽
メインのトラックをしっかり作り、他のウワモノはできる範囲でやることが飽きずに続けるコツです。ウワモノの耳コピは聞き取れる範囲でやっています。

Ciao!みなさんこんにちは!このブログでは主に
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の4つのトピックについて発信していきます。

今回は音楽レシピ、東京VICTORYのカバー音源制作振り返りの第2回です!
音楽レシピでは、DTM音楽作成に役立つ豆知識を紹介していきます。
現在ではノートパソコン1台で本格的な音源を作ることができます。
「自分で作曲をしてみたい」、「市販のカラオケ音源では物足りないから自分で音源をつくりたい」といった方も増えてきているのではないでしょうか?

東京VICTORYのカバー音源制作振り返りの第2回の今回は、オリジナル音源を耳コピーして楽器の音を入れていく、アレンジとレコーディングの作業を振り返ります!
私自身はただの素人ではありますが、参考にしていただける点もあると思います。
よければお付き合いください!

私が作成した音源はYouTubeで視聴可能です!ぜひご視聴ください!

Abstract | メインのトラックをしっかり組み上げ、他はできる範囲で

DTM音楽制作では、ドラム・ベースなどのリズムトラック、コード楽器類のトラック、ボーカルといったメインのトラックをしっかり作ることが重要と考えています。
逆にその他の上モノなどのトラックは、できる範囲でやってくぐらいで良いかもしれません。
耳コピーで言えば、メインのトラックはしっかり聞き取ってコピーし、他のトラックは聞き取れる範囲でコピーしていくイメージです。

私の音楽制作作業はリズムトラックから組み上げていくスタイルを取っています。
最初にドラムとベースのトラックを作成します。
ドラムとベースを同時進行で、ドラムを録ったらベースを録る、ベースを録ったらドラムを録るという感じで進めていきます。
ちなみにドラムもベースもMIDIキーボードを弾いて入力しています。

リズムトラックを作成したらピアノやギターなどのコード楽器でバッキングトラックを作ります。
リズム楽器を入れてコード楽器を入れた段階で楽曲のイメージの7割ぐらいは決まる印象があります。
逆に言えば、リズム楽器とコード楽器さえしっかり耳コピーできていれば、ほかは聞き取れる範囲でやっていけば、それなりの完成度で楽曲を作ることができます。
私は耳コピーは得意ではないので聞き取れる範囲で、ある意味諦めつつ耳コピーをしています。

ボーカルやコーラスの録音に至っては、ピッチ補正ソフトの力にかなり頼ります。
音程はピッチ補正ソフトである程度補正することができるので、音程を追い込みすぎる必要はないと考えています。
逆に音程は補正できるため、ボーカルやコーラスの録音で最も気をつけるべきところは、声質や抑揚といった表現の部分になってきます。

このようにできる範囲でやっていくことが飽きずに続けていくコツだと考えています!
編集でなんとかなる部分は割り切って妥協し、ポイントポイントに集中することで効率的に作業をすすめることができます!



Background | 「東京VICTORY」の要素分解

まずは「東京VICTORY」という楽曲を要素分解していきます。
曲の全体像については、前回の記事で紹介していますので、ここではおさらいだけにします。
また、楽曲の要素分解として、使われている楽曲を私が聞き取れた範囲でご紹介します。

前回のおさらい |「東京VICTORY」の全体像

前回は「東京VICTORY」についての私なりの解釈をお話しした上で、参考にするオリジナル音源と私のDTM環境をご紹介しました。
「東京VICTORY」は東京オリンピックに向けての応援歌(アンセム)ではあるものの、震災からまだ立ち直れていない日本の状況や変わっていく故郷への郷愁と、そんな状況がありつつも前を向こうとするためらいと前向きな気持ちが同居した応援歌です。

音楽的には、バンドサウンドと特徴的なピアノのメロディーが織りなすサザンらしいサウンドですが、オートチューンやアグレッシブなドラムの音作りなど先進的な取り組みも入っています。
また、コード進行もかなりシンプルです。
シンプルなコード進行であはあるものの、冒頭部分、サビ、大サビと抑揚があり、1曲を通して広いダイナミックレンジを感じさせます。
特徴をまとめると、以下のようになると思います。

  • サザンらしいバンドサウンド
  • シンプルなコード進行
  • 広いダイナミックレンジ
  • アグレッシブな音作り

「東京VICTORY」で使われている楽曲 | 「東京VICTORY」の構成要素

「東京VICTORY」で使われている楽器は、

  • ドラム
  • ベース
  • エレキギター & アコースティックギター
  • ピアノ
  • パーカッション
  • ハーモニカ

といった一般的な楽器に加え

  • シンセサイザー
  • ストリングス
  • SFX(効果音)

が入っています。
これらの楽器のトラックを作って、実際の楽器やMIDI楽器をレコーディングしたり打ち込んだりしていきます。

構成楽器をざっくりと図にすると図1のようなイメージになります。
左右にギターが入っており、手前にバンド楽器とボーカル、後ろ側にシンセやストリングスが入っているようなイメージです。
それぞれの楽器の音色やフレーズは耳コピーをするなかで捉えていきます。

図1. 「東京VICTORY」の構成楽器のイメージ。横軸は左右のパンのイメージ。縦軸は下のほうはメインの周波数のイメージ、上の方は前後感のイメージを表す。



Method | 耳コピーの道のり

ここからは耳コピーの道のりを振り返ります。
耳コピーの手順はおおまかには以下です。

  1. 音源の読み込み
  2. リズムトラックの作成
  3. バッキングトラック(コード楽器)の作成
  4. 上モノトラックの作成
  5. パーカッションの作成
  6. 歌・コーラスのレコーディング

2のリズムトラックの作成で楽曲の全体像の5割以上が決まり、3のバッキングトラックの作成までで7割程度のイメージが固まってきます。
ここまでをできるだけしっかりやり、他の上モノは聞き取れる範囲でコピーしていくのが効率よく作業を進めるポイントと考えています。
以下ではそれぞれの工程の詳細をお話します。

音源の読み込み

耳コピのときにはまず音源をDTMソフトに読み込みます。
オリジナル楽曲のときには、仮のギター or 仮のピアノと仮歌を最初に入れます。

テンポの確定

まずは音源のテンポを測定して確定します。
テンポを測定するには、Logic Pro XではBPM Counterというプラグインを使います。
適当なトラックにBPM Counterを挿し、そのトラックを録音可能にして音源を流すと自動でテンポを測定してくれます。
mp4などでパソコンに音源が保存されている場合には、その音源をトラックに読み込んで、そのトラックにBPM Counterを挿すとよいでしょう。

BPM Counterを挿して再生すると、そのトラックの音源のBPMが測定されます。
ドラムなどのリズムトラックが鳴っている箇所を再生する必要があります。
たまに半分や2倍のBPMが表示されるので、適宜x2ボタンやx1/2ボタンを推します。
「東京VICTORY」のBPMは144.0でしたので、Logic Proのテンポ設定も144.0にしておきます。

 図2. 参照音源のBPM測定

音源の読み込みと編集

テンポが決まったら音源を読み込みます。
CD音源はPC内にmp4データがあったのでそれを直接読み込みました。
Live音源はデータはないので、何かしらの機器で一度出力した音を”レコーディング”します。
例えば、DVDプレーヤーで再生し、ライン出力を録音します。
パソコンでDVDを再生する場合は、再生した音をイヤフォンジャックから出力し、それをオーディオインターフェイスに入力して録音してあげます。

音源を読み込んだら、グリッドに合わせます。
CD音源の場合は、たいていはテンポがピッタリ合っているので、どこかの拍をあわせれば全体がグリッドに合います。
小節の頭でキックが強くなっているところを見つけ、その波形のピークを小節始めのグリッドに合わせればよいでしょう。
Live音源の場合は、テンポが揺れるので、どこか一箇所を合わせても全体は合いません。
私は、Logic Pro XのFlex Time(polyphonic)を使って小節頭をあわせています。少し面倒な作業ですがやっておくと耳コピが楽になります。

 図3. 読み込んだ参照音源

リズムトラックの作成

参照音源を読み込んだらドラム、ベースのリズムトラックを作ります。
パーカッションが目立つ楽曲の場合には、この段階でパーカッションのトラックを作る場合もあります。
今回は、パーカッションを後で作った記憶があります。

ドラムとベースの音源については、私はLogicのプリセットを使ってしまうことが多いです。
音色の調整はミキシングのときに微調整するぐらいにしています。
玄人なDTMerには音源を作り込む方もいますが、私はあまり作り込みません。
今回は、ドラムは”Brooklyn”、ベースは「Fingerstyle Bass」を使っています。

ドラムとベースを入力する順番としては、ドラムとベースを交互に録音していくことが多いです。
Aメロドラム→Aメロベース→Bメロドラム→Bメロベース
というイメージです。
以前はドラムをひたすら作ってからベースを作ったりしていましたが、ドラムだけだと完成形がイメージしづらいのでこのスタイルになってきました。

ドラムの入力

ドラムの入力は基本的にキーボード(KORG D1)を弾いて行います。
キック & スネアとシンバル類を分けて入力します。
MIDI入力が上手な方には、キック、スネア、シンバルを両手で同時に入力できる人もいますが私には難しいので別々に録ります。
MIDIで入力したら、私の場合は、クオンタイズを使ってタイミングを完全にグリッドに合わせてしまいます。
人が演奏する感じにならないので、完全に合わせるのは良くないという意見もありますし、私も同意しますが、MIDI入力でタイミングがそれなりに合わせられるほど楽器が上手ではないので、この点は妥協します笑
タイミングが完全にグリッドに合ってしまっていても、MIDIキーボードを弾くことで自然な強弱をつけることができます。
画面でMIDIの音符を入力することもできますが、それだと強弱をつけるのが難しく余計人間が演奏する感じになりません。
リズムは妥協しながらも、MIDIキーボードを弾くことで強弱の方を優先しています。

ドラムの入力はキックとスネアから始めます。
入力は右手だけで行います。
親指でキック(C1)、中指でスネア(E1)の音を弾きます。
1/16でスネアのゴーストノートを入れますが、その際には人差し指でD1の音を触ることで、かすかなスネアサウンドを入れます。
フィルインは別で入力します。
フィルインはキーボードを弾かずに画面上で入力することが多いです。
なので、キーボードを引く際には、フィルインはは適当にやります。
次にシンバル類を入れます。
シンバル類は、ハイハット(クローズ、オープン)は右手、クラッシュ・スプラッシュは左手で入力することが多いです(音が離れているため片手だと間に合わない)。

参照音源を聞く際、キックの位置がわからない場合には、音源をオクターブ上げて聞いてみたり、キックが入っている50-100HzぐらいをEQでブーストして聞いてみるとわかりやすいです。
「東京VICTORY」の場合はキックがかなり前に出てきているので、キックが聞こえないということはありませんが、フィルインの中でどこでキックを入れているかわかりにくい場合にはこうして確認することもあります。
また、タム回しの順番がわかりにくいときにはLive DVDの映像を確認します。

ベースの入力

ドラムが取れたらベースです。
ベースもキーボードを弾いて入力します。
ベースは、フィルインも含め、よほど弾くのが難しいフレーズでなければ画面上での入力は使いません。
「東京VICTORY」のベースラインはAメロはシンプル、Bメロはストップアンドゴーのかかったような特徴的なフレーズ、Cメロ(サビ)は8分音符でオクターブをとる定番フレーズです。
比較的コピーしやすいベースラインです。

図4. ドラム(Brooklyn+)とベース(Fingerstyle Bass)のトラック

図4の画面右側を見てわかる通り、フレーズごとぐらいでぶつ切りにしてドラムとベースを録音しています。
図4では、Aメロ、Bメロぐらいの区切りで録音していますが、場合によっては1小節だけ切り出して録音することもあります。
プロではないので、自分の演奏力でできる範囲で適当に手を抜いてやります。

バッキングトラックの作成

リズムトラックが作れたら、バッキングトラックを作っていきます。
たいていはギターやピアノなどのコード楽器から作り、全体のイメージをおさえます。
「東京VICTORY」ではピアノが特徴的なので、ピアノから入力しました。

ピアノの録音

ピアノはKORG D1を弾き、アナログで出力したものをレコーディングしています。
音色としてはKORG D1のPIANO1のサウンドとなっています。
「東京VICTORY」のピアノの音色は結構エッジが立っていてます。
一方で、KORG D1の音源はまろやかなので、

  • Touch(鍵盤の重さ)の設定を軽めにする
  • ミキシングでコンプレッサーを強めに掛けて倍音を加える
  • Exciterプラグインで倍音を付加する

という方法で対処しています。

MIDI入力ではなく、弾いた音を録音するメリットとしては、タイミング調整のしやすさがあります。
ピアノのような楽器で和音を弾くと、それぞれの音は微妙にタイミングがずれて鳴ります。
MIDIで入力してクオンタイズしてしまうと、このようなズレも全くなくなってしまい、さすがに不自然な音になってしまいます。
MIDIで和音を弾いた場合には、このズレが残るよう、丁寧にタイミング補正する必要があります。
一方で、アナログにしてから録音した音の場合、タイミング補正はFlex Time (polyphonic)で行います。
Flex Timeで補正すると、和音の中の音全体がタイミング補正されるので、和音内のそれぞれの音が鳴るタイミングのずれが残ります。
したがって、適当にクオンタイズして補正しても自然な感じに仕上がります。
そもそも、楽器が上手な方はタイミング補正しなくてもいけてしまうので問題はないかもしれません。
しかし私は楽器が上手ではないので、タイミング補正は必須なのです。

ピアノを実際に弾く際には、難しい場合は左手と右手を別々に録ります。
今回はそこまで難しい左手の動きもない(聞き取れていないだけかもしれないが)ので、両手同時に録音しています。
正直、和音を完璧に聞き取れるほど耳が良くないので、和音は引きやすい位置(展開型)で適当に弾いています。
サビのカウンターメロディーのところのような目立つところはしっかり聞き取ってコピーしにいっています。

図5. ピアノのトラック(Piano- Touch1)。画面右側のリージョンを見ると、細切れにして録音していることがわかる。

ギターの録音

ピアノと同様に、ギターも実際の楽器を弾いて録ります。
ギターの場合はLogicのデフォルトに良い音源がないので、ほぼ必ず実際の楽器で録音します。
特に、エレキギターについてはLogicには豊富なアンプシミュレーターがあるため、ライン出力を突っ込んであげれば、いろいろな音色でエレキギターを演奏することができます。

アコースティックギター

「東京VICTORY」では最初のサビと同時に始まるアコースティックギターのサウンドが印象的です。
CD音源ではアコースティックギターは左右で2本なっているので、今回のコピーでも2本録音しています。
同じ楽器を別々に録音しただけですが、それでも十分立体感が出てきます。

ギターの入力では、他の楽器ほどシビアにクオンタイズをかけません。
特にアコギでは、ストロークで腕を振る動作で自然にリズムが揺れますが、これを残したいので小節の頭や数小節に1回だけ、グリッドに合わせます。
これで全体のリズムがだいたい合いつつ、自然なグルーブを残すようにしています。

図6. アコースティックギターは左右一本ずつそれぞれ録音(Natural Flat Pick L, Natural Flat Pick R)
エレキギター

エレキギターは左右2本ずつ+大サビの1本で、合計5トラック作っています。
「東京VICTORY」では、左のギターが少し歪んだ感じで「ジャーン、ジャッジャジャーン」と鳴っています。
サビの最後では「グオーン」というglissandoが聞こえます。
CD版の左ギターは、サビでどう弾いているのかよくわからなかったため、Live版を参考にしました。
「ズズジャッ、ズジャッ、ズズジャッ、ズジャッ」というリズミックなバッキングを弾いています。
アンプとエフェクターでそれぞれ少しずつ歪ませています。

一方の右のギターは比較的クリーンでAメロでは「プワ〜ア~ン」、Bメロでは「ミ、レー、ラー」と単音で鳴っています。
Aメロの方は多分アームでワ~ンとやっています。
サビでどう弾いているのかやっぱりよくわからなかったので1/16でバッキングを弾いています。
この辺はCD版と違っていてもご愛嬌です。

これら左右のギターに加え、サビでは少し奥まったところで高い音でギターっぽいものが鳴っています。
「ミミミミッ、ミミッミミ、ミミミミ」とミの音でキラキラした1/16の音が鳴っています。
もしかしたらギターではないかもしれませんが、今回はギターで再現しています。
5本目のギターは3サビ後のイントロから「Wow」に入るところの「でけでけでけでけ」というglissandoと最後のサビの前半で鳴っているものです。

ギターアンプの音作りはプリセットから調整しています。
Classic Driveがシンプルで調整しやすいので、今回は5本ともClassic Driveから調整しました。

図7. エレキギターのトラックと左チャンネル(少し歪ませたバッキング)のギターのアンプの設定

上モノトラックの作成

ハーモニカやグロッケンなどの単音楽器やシンセ・ストリングスといったパッド系の上モノ楽器を入れていきます。
リズムトラックとバッキングトラックまで作るとだいたい曲のイメージができているので、あとは残りの音を埋めていくイメージです。

ド頭のシンセパッドの音色

上モノトラックで一番悩んだ箇所が、曲のド頭の「Wow」のバックのシンセの音色です。
Aのコードを何かしらのシンセで弾いているのですが、原曲を聴いてもオルガン系の音色なのかシンセパッド系の音色なのか今ひとつ判別が付きませんでした。
そこで、前回の記事で紹介したように「ふざけるなライブ(2019年)」のメイキング映像を参考しました。

このライブでは、1曲目に「東京VICTORY」が演奏されます。
メイキング映像では、1曲目の始め方についての話し合いの場面が収録されています。
そこで、桑田さんが「このSE(効果音)のあとで、原さんのキラキラしたシンセの和音に入るのでどう?」と言っています。
これで、曲の出だしが「キラキラ系のシンセ」で良いことがわかりました。
さらに原さんが和音を弾く場面のあるので、狙うべき音色がよくわかりました。
耳の良いかたならここまでしなくても音色が判別できるのかもしれませんが、私には難しいのであの手この手で耳コピーをしていきます!

結局、「Outer Lands Synth」というLogic Pro Xのプリセットを選びました。

Aメロのシンセのパセージ

次に耳コピーに苦労したのはAメロでコロコロ鳴っているシンセです。
右に行ったり左に行ったりしながら1/16でコロコロ鳴っています。
メロディーがよくわからないので適当にコピーしています。
音色は「Expanding Pluck」というものを採用しました。

途中のイントロで入るNative American Flute

大サビ前の「Wow」の前の間奏では、ハーモニカがイントロのメロディーを取りながら、それに加えて「ラードミレード、ラ、ラ、ドミレード」とフルートような音が入ります。
大サビ後「We got the victory」の後でも同じ音が入っています。
実際の元音源では何の楽器かよくわかりませんが、「Native American Flute」というLogic Pro Xの音源が良さそうだったのでこれを使っています。
雰囲気は出ていると思います。

最後のイントロで入るエレピ的な音

大サビ後のイントロ、「We got the victory」のところで、左側にリズミカルなギラギラした音が入ります。
これもやはりどのような楽器なのかわかりません。
今回は「80s FM Piano」というエレピ音源でコピーしました。

その他の上モノトラック

他に上モノ的なトラックとして、

  • Glokenspiel: ピアノのユニゾン
  • String Ensemble: Bメロ、サビなどのパッド
  • 70s Analog Lead: イントロ
  • Electro Lazer: 2サビ終わりのイントロの「グワーン」という効果音
  • Arena Crowd Cheer, Crowd Cheer (Logic Proのループ音源): 歓声の効果音

を使っています。
聞き取れた範囲で上記を追加しました。

図8. Synth & Stringsと80s FM Pianoのトラック
図9. SFXトラック(一番下の3つ)

パーカッショントラックの作成

パーカッションは以下の5トラックを作成しました。

  1. Bell Tree (Orchestral Kit): 2番のAメロ終わり、「一番星」のところの「キララン」という音
  2. Woodblock (Orchestral Kit): 2番のAメロに裏拍で入る打楽器
  3. Tambourines: Bメロ、サビ等
  4. Hand Claps: イントロ
  5. Latin Kit Shaker: 大サビ前のイントロのシェーカー

苦労したのは2のWoodblockです。
原曲では、2番のAメロにかなり乾いた音で「ンカッ、ンカッ」と裏拍で入ります。
火の用心で鳴らすやつのような音です。
似たような音がLogicの音源にないので、Woodblockを加工することにしました。
火の用心も木片を叩いているのでWoodblockの一種ですが、いわゆるWoodblockとは音色がだいぶ異なります。
いわゆるWoodblockの音と比べると、甲高く乾いた音です。
そこでアタックを強調するためにコンプレッサーをかなり強くかけて乾いた音に近づけています。
ちょっと抜け感が足りませんが、これが限界なので妥協しました。

図10. パーカッションのトラック

歌・コーラスの録音

楽器を全て録り終わったら、歌とコーラスのレコーディングに入ります。
歌は上手ではないので、Aメロ、Bメロ、サビぐらいの単位で分けて録ります。
複数テイク録音して、全体として良いものを採用したり、部分的に良いものをつなぎ合わせて採用します。

歌・コーラスは、ミックスダウンの段階でかなり加工します。
トラック数はその加工の工程次第で変わってきます。
ミックスダウンについては次回で取り扱うので、今回、歌・コーラスについてはレコーディングのときに気をつけていることをお話して終わりにします。

ボーカルの録音で気をつけていること

ボーカルの録音では、音程よりも、

  • 強弱や発音のニュアンス
  • きれいに声が出ているか
  • ノイズが入っていないか

という点に気を使っています。
音程はピッチ修正ソフト(Flex Pitch)で修正できるためです。
ニュアンスや声の綺麗さなど、Flex Pitchで修正できない部分に気を配ります。
とはいえピッチ修正は少ないほうが編集作業が楽ですし、自然な仕上がりになるのでピッチもなるべく合うように気をつけてはいます。
また、リズムも修正しすぎるとグルーブ感がわからなくなってしまうので、修正は控えめにしています。
声質 > 強弱 > リズム > 音程の優先順位で気をつけています。

宅録では思わぬノイズが入ってしまうことがあります。
自分で歌いながら録音をしていると、ノイズが入っていても気づかないことがあります。
スタジオとは異なり、ディレクターやエンジニアが別にいるわけではありません。
そこで、良いテイクを複数本取っておくようにしています。

コーラスの録音で気をつけていること

コーラスはいわゆる字ハモとウーハーを録ります。
字ハモはメインボーカルにリズムを合わせて別のメロディーを歌います。
ウーハーはUhやAhといった発声を重ねて和音を作ります。

コーラストラックは後段でかなり加工するので、それを前提に録音します。
加工することで、後ろに下げてメインボーカルよりも控えめにする効果も得られます。
音程については、ほぼすべての音を調整します。
なので、音程はそれほどシビアになる必要はありません。
メインボーカル同様、きれいに発声できているかが最重要ポイントになります。

また、リズムを調整するのは面倒なので、リズムには気を使います。
特に字ハモはメインボーカルに合っている必要があるので、メインボーカルと同じリズムで歌えるように気をつけます。
それでも合わないところは、Flex Pitchで調整します。

ウーハーコーラスはたいていは3和音を録ります。
さらに、それぞれの音を2トラックか3トラック重ねます。
今回は2トラック重ねているので、6トラック取っています。
これらのコーラスのタイミングがぴったり重なっていないと格好悪いので、ブレスのタイミングや伸ばし方も含めてぴったり重なるように注意します。
ただ、ある程度あっていればあとは編集でどうにかなります。
ウーハーコーラスの場合は、どれか一つのトラックにボリュームオートメーションを書き、それを他のトラックにコピーペーストすることで、同じタイミングで発声を開始して、同じタイミングで終了するようにできます。



Conclusion | まとめ

最後までご覧いただきありがとうございます!
「東京VICTORY」の耳コピー作業におけるアレンジとレコーディングを振り返りました!

あまりこだわりすぎず、適当に手を抜きながら、ポイントポイントを押さえていくことが重要です。
ドラムとベースのリズムとコード楽器のリズムなどの大きなところを押さえていれば、楽曲の全体的なイメージが外れることはないはずです。
あとは、聞き取れる範囲で上モノを足していくことで耳コピーの完成度を上げていくことができます。

また、楽器の演奏やMIDI入力、ボーカルを録音する際にも、編集でなんとかなる部分は割り切って妥協し、ポイントポイントに集中することで効率的に作業をすすめることができます。
できる範囲でやっていくことが飽きずに続けていくコツだと考えています!
あえて「創作は妥協の産物」ぐらいのつもりでやっていくと、完璧主義に陥ることを防ぐことができます!

以上、「音楽レシピ | 「東京VICTORY」カバー音源の制作を振り返る2(アレンジ&レコーディング編)」でした!
またお会いしましょう!Ciao!

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