転職レシピ|天文学系ポスドクの民間転職(不要だった事前準備2: TOEIC編)

オーストリアのイベント会場の背景 転職
博士・ポスドクにとって英語はプラスアルファの武器です。ただ、資格を取ることは最優先ではありません。

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今回は転職レシピです!
天文学系ポスドクの民間転職シリーズでは、私自身の転職活動の例に、博士・ポスドクの転職活動の流れをご紹介します!
不要だった事前準備編では、2018年当時私が行った転職活動準備のうち、今思えば不要だったかもしれないものをご紹介します。
前回は無駄な労力がかかる新卒採用への自己応募を取り上げました。

転職活動は、現職の業務を行うなか、空き時間を使って進める必要があります。
博士・ポスドクであれば、研究を進めながら転職活動を行います。
なので、不要な労力は避けたいものです。

この記事では、不要だったかもしれない準備の例をもう一つ取り上げます。
それはTOEICの受験です。
かなりの時間と労力を割いた結果良いスコアを取ることができ、履歴書の資格欄に記入できました。
しかし、それが転職活動の成否を左右したかというと甚だ疑問です。
多少の箔は付いたとはいえ、今思えば成果に見合わない労力だったかもしれません。
私がTOEICの準備に割いた労力と、その結果に対する企業からの評価をお話します。

これから民間企業への転職を考えている博士・ポスドクのみなさまには、TOEICなどの資格にどの程度労力を割くかの参考にしていただきたいと思います!
気軽な気持ちでお付き合いください!

Abstract | 英語力はプラスアルファの武器。資格は必須ではない

博士・ポスドクの民間企業への転職活動において、英語力はプラスアルファの武器になります。
アカデミアの世界では、英語で論文の読み書きができて、非日本語話者の研究者と英語でコミニュケーションが取れることは当たり前です。
なので、民間企業で英語力が評価される=武器になるというのは、最初はかなり違和感を感じます。
日本の民間企業に勤めていて「英語ができない」という方のレベルは、博士・ポスドクの「英語が苦手」という方のレベルとは全く異なるので、英語が得意でない博士・ポスドクも自信を持ってプラスアルファの武器として使うべきです。

一方で、TOEICの点数などの資格が必要かといわれると、そうでもありません。
転職活動はやはり即戦力性が見られます。
英語についても「実際の業務で使えるか」ということが注目されます。
TOEICの点数が良くても、実際の業務で使ったことがなければ点数ほど高く評価されません。
逆にTOEICの点数を持っていなくても、日常的に英語を使って仕事をしているという事実は評価されます。
英語を使って仕事をしていたことを職務経歴書で表現できるのであれば、資格は必須ではありません。

博士・ポスドクの場合は、日常的に英語の論文を読み、英語の論文を書き、非日本語話者の研究者とメールや直接の会話でコミュニケーションを取るなど、「英語を使って仕事をしている経験」があります。
英語力というと、リスニングやスピーキングが注目されがちですが、英語の資料を読解できる能力も評価されます。
スピーキングが得意でなくても、英語の論文たくさん読んでいた経験は高く評価されます。
このような経験は職務経歴書で十分表現できるので、資格は必須ではないと言えます。

とはいえ、もし時間に余裕があるならばTOEICを受けて点数を取っておくメリットはあります。
TOEICの題材は、民間企業の企業活動の中で起こるエピソードが多く、民間企業に疎い博士・ポスドクにとっては、TOEICの教材を通じて産業の世界を学ぶことができます。
これは博士・ポスドクにとっては大きなメリットです。
また、転職先に海外研修や海外赴任のプログラムがあり、それに応募する場合には有利になります。
このようなメリットと労力や準備時間を天秤にかけて検討する必要があります。



Background | 転職活動における英語力

転職活動において、英語力はプラスアルファの武器になることは間違いありません。
日本企業の従業員は驚くほど英語ができません。
博士・ポスドクで、日々英語の論文を読み、英語で論文を下記、英語で研究発表している方でも「I’m not good at speaking English」と言って発表を始める方はいます。
でも日本企業に勤める方の英語ができないのレベルは比較になりません。
例えば、説明書などの英語で書かれた簡単な資料も全く理解できないレベルです。

このような状況ですから、博士・ポスドクが日常的に英語を使って仕事をしてきたというのは大きな強みになります。
英語の文章を毎日読み書きし、英語でプレゼンを行い、共同研究者と英語でやり取りをするという英語の実務経験は、一般的な民間企業の英語人材の経験とは一線を画しています(もちろん民間企業にも本当にバイリンガルの優秀な方もたくさんいますが)。
「英会話教室に通っていた」とか「短期で語学留学をしていた」などのちょっとした英語経験とは比較にならないので、英語を使って研究をしていた経験は武器になります。

データサイエンティストとして民間企業に転職する際には、メインの武器にはなりません。
実際、転職エージェントにも英語力はそこまで見られないとコメントされました。
しかし、企業によっては論文実装をやっていたり、非日本語話者の同僚がいる、クライアントが外資系企業である、そもそも応募企業が外資系など、英語力が重宝される場面は必ずあります。
面接でも、英語力についての質疑応答は必ずありました。

とはいえ、「資格」という形で英語力を誇示することが本当に必要かということには疑問符がつきます。
あくまでもプラスアルファの武器であり、そもそも英語を研究で使っていた経験を語ることができるので、資格の重要度は高くはありません。
私の意見としては、時間に余裕があれば取るに越したことはありませんが、決して最優先ではないと考えています。
以下では、私がTOEIC受験に払った労力、その結果と、そこから得られた学びについてお話します。



Contents | 不要かもしれないTOEIC受験 [不要度: 50 %]

2018年当時、ポスドクから民間企業への転職活動の準備としてTOEICを受験しました。
かなりの時間と労力を割いて準備したため、良い結果を得ることができました。
しかし、転職活動において労力に見合うプラスが合ったかというと微妙なところです。

転職活動の結果、外資とも関連がある民間コンサル会社に転職することになったため、TOEICを受けたことはそれなりにプラスにはなったのでしょうが、決め手にはなっていないと感じています。
労力に見合うほどのプラスではなかった、ただ学びもあったし、効果もあったため不要度は50 %と考えています。

以下でさらに詳しくお話します。

TOEIC受験の動機

私のTOEIC受験の動機は、履歴書の資格欄に書きたかったからです。
中途採用にせよ新卒採用にせよ、応募書類を作ろうとすると何かしらわかりやすい資格を書きたくなるのが人情です。
私もご多分に漏れず書きたくなりました。
英語力にはそれなりに自信をもっていたため、TOEICの点数が書けたら箔が付くかなぐらいの気持ちでした。

ところで、自覚の有無に関わらず、英語は博士人材の研究コアスキルの一部です。
「旅行で使う」とか「英会話教室で使う」とかではなく、研究という仕事で英語を日常的に使っていたというところがポイントです。
多くの博士・ポスドクの方は、

  • 英語の論文を読み、
  • 英語で論文を書き、
  • 国際学会では英語で発表し、
  • 外国人の共同研究者とメールや口頭でやりとりする

といったように英語に触れ、英語を使う機会が日常的に存在することでしょう。
研究室に留学生がいる場合には、研究室ミーティングを英語でやっているのではないでしょうか?
このように多くの博士・ポスドクにとって英語はアピールできる研究コアスキルの一つです。

TOEIC受験にかかった労力

TOEIC受験にはかなりの労力、具体的には1日2–3時間 x 3週間毎日ぐらいを割きました。
英語にそれなりの自信を持っていたものの、せっかくテストを受けるなら良い結果を残したいと考えてしまうものです。
当時のメールを見返すと、転職を決心したのが2018年の6月17日で、6月19日にはTOEICの申し込みを済ませています。
TOEIC Listening & Reading公開テストの日付は2018年7月29日なので、申込みから約1ヶ月程度で試験を受けたことになります。

申込みを済ませた次の週末に書店で参考書を購入し、準備をはじめました。
「3週間で900点を目指す」といった類の参考書です。
TOEIC受験には受験料もかかりますし、やはりせっかく受けるならと考え、この参考書で毎日勉強しました。
夜、早めに研究を切り上げて家で3時間英語の勉強をするということを3週間続けました。
この期間に、転職サイトへの登録、そこから紹介された転職エージェントの面談と、転職活動本体の準備も始めていました。
このことによって、研究の進みにはかなりブレーキが掛かっていたと思います。

TOEIC受験の結果

前回記事で紹介したの本当に無駄だった準備とは異なり、TOEICの方は無事900点を上回り、良い結果を得ることができました。
準備にかなりの時間を費やしたので、良い結果が出るのはある意味当然です。

ところが、実は書類選考に応募した履歴書にはこの結果は載っていません。
というのもTOEICの結果が返ってきたのは8月20日で、実はそれ以前の8月10日頃からエージェントを通じて書類の応募を始めていたからです。
当時の応募した履歴書の資格欄を見ると「TOEIC Listening & Reading 公開テスト受験(現在結果待ち)」と書いてあります。
TOEICの結果が出た後にアップデートはしたものの、ほとんどの書類選考はTOEICの結果を掲載しないまま通っています。
したがって、TOEICの結果は書類選考の結果にはほとんど関係なかったと考えられます。
書類選考が通らなかった企業についても、TOEICの結果が載っていなかったことが原因とは考えにくいです。
中途採用の選考については、また別の記事で取り上げていくつもりです!

書類選考の後の面接の採用選考でも、TOEICの結果はアクセントにはなるものの成否の鍵にはならなかった印象があります。
英語が使えるかについてはほぼ必ず質疑応答がありましたが、TOEICの結果よりも「仕事で使えるか」が問われます。
英語で仕事(研究)をしていた経験については職務経歴書の方にしっかり書きます。
なので、応募企業の面接担当者からは、たいてい「英語の論文の読み書きをしているし、国際研究会での発表をしていたり、外国人との共同研究で英語でコミニュケーションを取っていたんですね」とコメントされます。

TOEICの点数が書いてなくても、仕事で英語を使えることは十分伝わります。
履歴書の資格欄にTOEICの点数を書く重要性はそれほどありません。
たまに履歴書まで読み込んでいる面接担当者が「TOEIC 900点超えすごいですね」と言ってくれるぐらいです。
ちなみに、転職エージェントにも「TOEICの点数より実際に仕事で使えるかを確認されるから、TOEICの結果を履歴書に反映する必要はない」と言われました。
TOEICを受ける優先度は高くないことがわかります。

TOEIC受験で得られた学び

TOEICの準備をしっかり行うと、博士・ポスドクは一つ大きな学びを得ることができます。
それは「英語教材を通じてビジネスの世界を知ることができる」ことです。
産業界の様子を全く知らない博士・ポスドクにとっては、民間企業などのビジネスの現場で起こることを英語教材を通じて覗き見る機会は、転職活動そのものに役立ちます。
例えば、

  • シューズ小売りチェーン店のどこそこ支店の売上が芳しくないから施策を考える
  • 小売店のポイント還元キャンペーンなのでリピート顧客を増やす施策のための議論
  • コンサルティングファームで活躍していた同僚が転職する話

など、マーケティングの話題や転職の話題など、これから飛び込んでいく産業界のイメージが湧きます。
これが、採用には直接影響はないものの、不要度を50 %に留めた理由です。

TOEICを受験しておいて良かったと思うもうひとつの点は、やはり点数という客観的にわかりやすい形の結果を得られたことです。
転職活動自体にはおそらくそれほど影響はありませんでしたが、転職後に「英語ができる人材」として見られます
もちろん同じチームで働いている同僚や直接の上司は、研究者として英語で論文の読み書きをしたり、研究会での発表をしていたというバックグランドを知っているため、仮にTOEICの点数がなかったとしてもそのように評価してくれるでしょう。
しかし、人事部のような個別のバックグラウンドを知らない人もいます。
例えば、社内で海外赴任の制度に応募した場合、最初に審査をするのはそのような人事部の人間です。そういった人たちにも、履歴書を見るだけで「英語ができる人材」であることが伝わるのがTOEICを取っておくメリットです。

転職前に英語を勉強する時間を確保でき、他に特に労力を割かなければならないタスクもないのであれば、TOEICを取っておくのも良いでしょう。
転職後は忙しくなってしまってできない可能性もあります。
最優先ではないですが、やっておいても良い準備ぐらいの位置づけと考えています。

TOEIC受験の反省点

TOEIC受験の反省点は、実は特別にはないです。
強いて言えば、TOEIC準備に時間を割きすぎていました。
ただ、

  • 6月に転職活動を決心したものの、入社は翌年の4月までにできれば良かった
  • TOEICの準備期間は転職エージェントと会い始めた頃で転職活動が忙しくなかった

というように、時間にかなり余裕があったため問題にならなかったというのが実情です。

もしこれが、すぐにでも応募書類を書いて転職活動を本格的に始めなければならない状況であったら、TOEICの準備はかなりの重荷になってしまうと思います。
残り時間や現職の忙しさも考えて優先順位を見極める必要があります。



Discussion | 不要な労力を避けるために転職エージェントを使う

転職活動における無駄を割けるためには、転職エージェントをしっかり使うことが重要です。
前回と今回で、転職活動において不要だったかもしれない労力を紹介しました。
今回のTOEICはともかく、前回紹介した新卒採用への自己応募は本当に無駄でしかなかったです。
この無駄は、転職エージェントとの面談を先にやっていれば確実に防げたものです。

転職エージェントは、応募者は無料で利用することができます。
というのも、転職エージェントは応募者が入社する際に、紹介報酬として転職先企業から報酬を受け取ることができるからです。
もっと言えば、何社でも利用することができます(義理と効率の問題があるのでむやみにたくさんつかうことはおすすめしません)。
何人かのエージェントから意見を聞いて、転職市場の様子を聞いたり、自分の経歴を話して、どのようなスキルが活かせそうか、どの職種が良さそうかなどを議論することができます。
民間企業の事情に疎い博士・ポスドクは積極的に転職エージェントを活用すべきです。
転職エージェントの活用法はまた別の回に取り上げますのでお楽しみに!



Conclusion | まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございます!
無駄だったかもしれない準備の例としてTOEICの受験を紹介しました!

民間企業などのビジネスの現場で起こるエピソードに触れることができるという点で、博士・ポスドクがしっかりと準備をしてTOEICを受験するメリットがあります。
一方で、博士・ポスドクは研究で日常的に英語に触れ、実際に仕事で使っています。
職務経歴書に英語を使って仕事をしていたエピーソードを書くことができるため、TOEICの点数という資格欄に頼らなくても英語力をアピールすることは十分できます
現在の研究の忙しかったり、転職活動の期限が近いなど、十分な時間が取れないのであれば、TOEIC受験の優先順位は下げるのが賢い方法でしょう。

また、不要な準備に労力を割くことを割けるためには早めに転職エージェントと面談をして、転職活動の全体像を掴んだり、転職市場の様子を知り、必要な準備を知ることが重要です。
転職エージェントの活用方法は別の記事でまとめる予定ですのでご期待ください!

以上、「転職レシピ|天文学系ポスドクの民間転職(不要だった事前準備2: TOEIC編)」でした!
またお会いしましょう!Ciao!

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