転職レシピ|天文学系ポスドクの民間転職(不要だった事前準備1: 自己応募編)

ウィーンの街路樹 転職
民間キャリアに移行する方法を広く知っておきましょう。アカデミアに残るにしても有益です。

Ciao!みなさんこんにちは!このブログでは主に
(1)pythonデータ解析,
(2)DTM音楽作成,
(3)お料理,
(4)博士転職
の4つのトピックについて発信していきます。

今回は転職レシピです!
天文学系ポスドクの民間転職シリーズでは、私自身の転職活動の例に、博士・ポスドクの転職活動の流れをご紹介します!
前回までは事前準備の中心となる、転職活動における情報収集の方針や方法についてお話してきました。

転職活動は、通常の業務をこなしながら空き時間で行う必要があります。
博士・ポスドクであれば、日々の研究を進めながら転職活動を行う必要があるのです。
博士・ポスドクとして働いているうちは、日々の研究をおろそかにするわけにはいきません。
転職成功に必要な準備はすべきものの、できれば不要な労力は避けたいものです。

そこで、今回は、私が行った事前準備の中で不要だったかもしれないものの例として、博士新卒採用への自己応募をご紹介します。
転職を成功させたいあまり、あれもこれもと手を出しそうになってしまうかもしれません。
しかし、この記事を読んでいただければ、本当に転職成功に必要なものとそうでないものを見極めるヒントが見つかるはずです!
ぜひ最後までお付き合いください!

Abstract | 知識を身につけて無駄な労力をへらすべし

博士・ポスドクの転職活動の主戦場は中途採用枠です。
これは学部卒・修士卒の応募する新卒採用とは全く異なる世界です。
中途採用では、即戦力が求められ、専門的な能力が問われます。
専門的な能力が問われるからこそ、研究を突き詰めてきた博士人材が有利です。

このことを知らずに、新卒採用枠に応募してしまうと、無駄な労力を払うことになります。
新卒採用枠は

  • 転職エージェントが使えない
  • 採用までのステップが多い
  • 各ステップの手間が多い

など、そもそも中途採用よりも労力がかかります。
また、新卒採用は応募から入社まで1年近くかかりますが、中途採用は4ヶ月です。
焦る必要もないのです。

まずは、博士・ポスドクが民間キャリアに移行しようとするときに、どのような方法があるのかを知る必要があります。
アカデミアに残るにしても、民間キャリアにどのような選択肢や可能性があるのかを知っておくと、自信をもって研究を続けられるでしょう。
修士課程・博士課程の学生の頃からリサーチしておくべきです(同時にアカデミックキャリアの選択肢もしっかりリサーチしてください)。

知識を身につければ、新卒採用枠に自己応募してしまうようなこと(私が数年前に犯した愚)はしなくて済むでしょう。
この記事では「私が数年前に犯した愚」をご紹介しながら、みなさまにそうならないための方法や心構えを学んでいただきたいと思います!



Background | 中途採用は新卒採用とは全くの別物。必要な準備や労力も異なる

民間企業への転職を考えているものの、何から手を付けて良いかわからない博士・ポスドクの方は多いのではないでしょうか?
転職活動は、通常の業務をこなしながら空き時間で行う必要があります。
3ヶ月から半年ぐらいのまとまった期間を投入できる新卒採用とは事情が全く異なります。
小さな労力でいかに転職を成功させるかが重要です。

転職活動で狙う採用枠は中途採用の枠です。
新卒採用とはかかる労力も時間も全く異なります。
応募から入社までの期間も、中途採用の方がかなり短いです。
したがって、中途採用の流れを知らないと無駄に焦って、無駄な労力を払うことになります。

転職活動の準備は転職エージェントと相談しながら行った方が良いです。
あまり自己流でやってしまうと、実は不要だったなんてことにもなりかねません。

以下では私がやってはみたものの、振り返ってみれば不要だったかもしれない準備の例をとして、博士新卒採用への自己応募を取り上げます。



Contents | 不要だった博士新卒採用への自己応募 [不要度: 100 %]

通年で博士卒の新卒採用をやっている企業もあります。
当時の記録を掘り返してみると、

  1. 日系大手メーカーP
  2. 日系大手メーカーN
  3. 日系大手シンクタンクM

への応募を検討していたようです。
その中で、日系の大手メーカーPは2018年当時、6月末締切の応募が残っていたため、これに応募しました。

自己応募をしてみた動機

私が民間企業への転職を決心したのが2018年の6月17日です。
決心はしたものの、最初は何をしたら良いかわかりませんでした。
漠然と考えていたことは、

  • せっかく博士まで行ったのだから、修士卒と同じような給料で民間に行きたくない
  • 博士の経験が活かせる企業が良い

というものです。
また、ポスドクを初めて間もない頃だったため、新卒扱いだと思いこんでおり、中途採用で応募するということを最初は考えていませんでした。

そこで、博士の新卒採用を行っている企業で、6月時点でも応募できる企業を探しました。
博士の学生時代にも大学で説明会が開かれており、参加したこともあるため、博士枠の新卒採用を行っている企業があること自体は知っていました。
とりあえず、その時点で知っている情報を手がかりに、6月17日のうちに日系大手メーカーPにプレントリー(Web上の手続き)を行いました。
ちなみに、本応募はしませんでいたが、日系大手メーカーNと日系大手シンクタンクMにも6月20日にはプレエントリーをしていました。

また、2019年の4月には民間企業で働き始めたい事情があったため、焦っていたというのもあります。
これも新卒採用のイメージしかなかった、つまり情報が不足していたための焦りです。
新卒採用では、年にもよりますが、前年の春頃からエントリーするのが一般的で6月というのはかなり遅いです。応募から入社まで1年のイメージですね。
しかし、転職活動のスケージュールの記事でもお話したとおり、中途採用では応募から4ヶ月で入社まで行きます。
転職活動のスケジュール感を知っていたら、焦って無駄な労力を割く必要はなかったわけです。

自己応募にかかった労力

日系大手メーカーPの場合、応募前の準備として

  1. プレエントリー
  2. 適性検査
  3. 本応募

をする必要があります。

1のプレエントリーは、エントリー用の企業のWebサイト上にアカウントを作ります。
名前などの基本情報を入力するだけなのでそれほど時間はかからなかったと思います。

2の適性検査はかなり面倒でした。
この適性検査は、テストセンターで受験の予約を取り、その時間に現地に出向いて受験しなければいけません。
いわゆるSPI(基礎学力の検査)と性格検査です。
SPIの準備は当然ゼロで臨んだので、労力としては最小限でしたが、そもそもテストセンターに出向いて受験するというのが手間だし時間がかかります

中途採用は、すでに企業勤めをしている人材を即戦力として引き抜くという性質のものなので、そこまでの労力はかからないことがほとんどです。
中途採用の場合にも、特に日系企業は適性検査がありますが、ネットで受験できます(それでもWindows OSが必要だったり面倒だった気がします)。
新卒採用は無駄に時間がかかるというのが率直な感想です。

3の本応募では、いわゆるエントリーシートを提出します。
書類をしっかり準備する時間もなく、とりあえず応募した記憶があります。
当時の書類を見返してみると、エントリーシートは職務経歴書とは作りが異なります。
職務経歴書はそれまでの職務で磨いてきたスキルや経験を具体的なエピソードとともに伝えるものです(博士・ポスドクの場合は研究の経験です)。
一方で、エントリーシートは、学生時代の経験(研究内容やその独創性など)や自身の強みなどを書いていく作りであまり具体的には書けません。
また、エントリーシートは企業ごとにフォーマットが異なるためいちいち準備する必要があります。
職務経歴書の場合は、こちらで用意するので何社でも使い回せます。
やっぱり新卒採用は応募者への負担がかなり大きいように思います。
時間をかけて工夫すればそれなりに良いエントリーシートが書けたのかもしれませんが、締め切りまで数日もない状態だったので、とりあえず埋めたという感じで提出しました。

自己応募をしてみた結果

1週間ほどして、日系大手メーカーPから下記の結果が通知されました。

「さて書類選考の結果ですが、エントリーシートの内容を踏まえ
慎重に検討させていただきました結果、残念ながら次選考への
ご案内を見送らせていただくこととなりました。」

いま思えば、この結果は当然です。
当時のエントリーシートを見返してみると、「研究で培ったスキルや経験を民間企業でどう活かすか」が全く書かれておらず、研究コアスキルを活かして活躍するイメージが湧かない書類であることに気づきます。
研究内容や自身の強みなど、情報の羅列になっているだけです。
もし、研究コアスキルを民間企業でどう活かしたいのかを書けていたら結果は違ったかもしれません。
ただ、それを書いたところで、この企業が求めることとマッチしていなかったら採用されないので一概には言えません。

自己応募で得られた学び

この自己応募で得られた学びはほとんどありません。
というのも、下調べをほとんどせずとりあえず書類を出しただけだからです。
得られたことを強いて挙げれば、

  • 新卒採用の応募には応募者の手間がかかること
  • とりあえず1社応募して転職活動に踏み出したこと

の2つです。

何事もまず一歩踏み出すということは重要です。
自己応募は賢い一歩目ではありませんが、それでも一歩踏み出すことには意味があります。
おすすめの第一歩は転職サイトに登録し、転職サイトから紹介されたエージェントと面談してみることです。

自己応募の反省点

この自己応募を振り返って得られる反省点は

  • 知識不足
  • それによって生じた無駄な労力

の2つです。
知識不足は焦りを生み、無駄な労力を生みます。

ではどのような知識があれば、無駄な労力を防ぐとこができたのでしょうか?
それは、一言で言えば

  • 研究者の民間キャリアについて幅広い知識
  • 民間企業が求めていること

の2つです。

研究者の民間キャリアについて広く知ること

研究者の将来キャリアについて、どのようなパターンがあるのかを知っておくべきです。
これはアカデミアに残る場合も同様です。
修士課程・博士課程の学生のうちから調べ、イメージを作っておくべきです。
そうすることで、いま必要な準備が何なのかを知り、行動することができます。

民間キャリアについて言えば、新卒採用だけでなく、中途採用(キャリア採用)や起業という道があることを知っておくべきです。
私の場合は、新卒採用しか知らなかったために無駄な労力を払いました。
もし、博士・ポスドクの民間キャリア移行の主流が中途採用であることを知っていたらそのようなことはなかったでしょう。

逆に、博士人材が中途採用で活躍できることを知っていたら、もう少しアカデミアを続けるという選択肢もあったのかもしれません。
実際、「民間企業にはいつでもいけるから、できるところまで天文学の研究をする」と言う友人もいます。
その方は研究の最前線で活躍できています。民間キャリアの可能性まで広く調べ、将来についてちゃんと考えている人の方が、アカデミック研究においても成果を出せるのかもしれません。

海外ではph.D(博士号)を取得した学生が起業するということは珍しくありません。
日本でも東大の松尾研出身者を中心にその動きが拡大しつつあります。
研究コアスキルの中には「経営者マインド」というものもあります。
研究費や自分の生活費をどこかのファンドから取ってきて研究成果を出していくというのは、自営業者的なマインドです。
また、教授にもなれば、研究予算を取ってきて、研究の経費を払ったり、ポスドクや学生に給料を払うなど、研究室の経営をする必要があります。
実は、研究者と起業は相性が良いのかもしれません。
ただ、海外ではそもそもph.Dが優遇されているという背景もあります。
日本では学歴(大学名ではなくて学んできた内容)が軽視されますが、そうでなくなってくると博士人材の活躍の場が広がるでしょう。

民間企業が求めていること

民間企業が博士人材に何を求めているのかを知る必要があります。
ニーズをしっかりと把握することで、自分を高く確実に売り込むことができます。
これは、中途採用で企業が何を求めているかを知ることと繋がりますが、新卒採用で学部卒や修士卒に求められることとは全く異なります。

民間企業が博士人材に求めるのは、

  1. 専門知識を業務で活かせる即戦力であること
  2. イノベーションの核を担ってくれること

であると私は考えています。1はこれまでの記事でも書いてきたとおり、中途採用は即戦力を求める現場だからです。

例えば、近年では日本の企業でもデータドリブンな経営や意思決定を行う企業も増えてきています。
企業が自社で保有するデータ量も増えてきている一方で、そのデータを有効活用できていないという悩みを抱えています。
特に日系企業は有効活用できていない傾向があります。逆に活用できているのはGAFAなどの外資系企業、国内でもスタートアップやベンチャーの方がデータを使ってガンガン成長するという方針が明確です。
データを有効活用したいのにできていないのは、それができる人材がいないからです。
だからこそデータサイエンティストが求められており、本格的なデータ解析のスキルが重宝される場合もあるのです。
観測系天文学者であれば、データ解析のスキル実戦で使っていますから、民間企業でも即活用できます。
このような事実を知っていれば、焦ってメーカーのよくわからない職種に応募することもなかったはずです。

2のイノベーションの核を担ってくれることついては、表立ってこれを期待してくる企業はほとんどないと思いますが、企業が専門的な博士人材を欲しがる背景にはこれがあると考えています。
高度経済成長期が終焉し、人口減少に転換した1980年代以降、日本企業は低成長への道をひた走っています。
1990年頃には世界の時価総額ランキング上位に名を連ねていた企業が、いまではほとんど全てランク外。上位はGAFAなどの新しい企業ばかりです。
資本主義社会は成長を続けていないと基本的には存続できない社会なので、会社も成長したいと考えています。
そのための一つの方策がイノベーションで、革新的な技術で新しいビジネスやビジネスモデルを創造することです。
実際、GAFAなどは優秀な専門人材を集め、革新的な技術を世に出して成長し続けています。
日本の企業でも、イノベーションを求めて大学と産学連携を行ったり、中途採用を増やす、博士人材を増やすなどの取り組みが増えています。

「最先端の技術を知っている、または最先端の技術を使って研究をしてきた」人材を欲しがっている企業があるということを知っておきましょう。
民間企業の技術レベルは低いので、大学の博士課程の研究で使ってきたレベルのスキルであれば十分最先端です。
自身を持って、焦らず自分を売り込んでください。



Conclusion | まとめ

最後までご覧いただきありがとうございます!
私が実際にやってしまった無駄な労力をご紹介しながら、そうならないための心構えをご紹介しました!

民間企業へのキャリアチェンジを考えている博士・ポスドクの方は、まずは民間企業へ移る方法としてどのような道があるのかを広く調べましょう!
この記事では中途採用枠を狙った転職にフォーカスしていますが、起業などの他の方法もあります。
「中途採用は民間企業から民間企業へ移るときのものでしょ」「ビジネス経験がないのに起業は無理でしょ」などど、先入観を持たずにリサーチしてみてください!ここは研究と一緒です!

以上、「転職レシピ|天文学系ポスドクの民間転職(不要だった事前準備1: 自己応募編)」でした!
またお会いしましょう!Ciao!

コメント

タイトルとURLをコピーしました