転職レシピ|天文学系ポスドクの民間転職(情報収集編その3)

ドナウ川の背景に記事の概要 転職
直接の知り合いからは、ほどよい深さで具体的なエピソードを聞きましょう!

Ciao!みなさんこんにちは!このブログでは主に
(1)pythonデータ解析,
(2)DTM音楽作成,
(3)お料理,
(4)博士転職
の4つのトピックについて発信していきます。

今回は転職レシピです!
情報収集編シリーズでは、転職活動における情報収集のやり方をご紹介します!
私自身の転職活動の例もお話します!

情報収集編その3では、直接の知り合いからの情報収集についてお話します。
博士・ポスドクが民間企業で活躍するには、研究コアスキルを活用することが重要です。
研究の経験やコアスキルが民間企業の業務のどのような場面で活用できるのか、具体的なイメージを掴むための情報収集の方法ついて紹介します。
民間企業でそのコアスキルが使えそうな具体的な場面を思い描けるようになることで、研究コアスキルを身に着けたときのエピソードが、転職後の活躍イメージと結びつきます。
これは職務経歴書を仕上げたり、面接で過去のエピソードを話す上で重要です。

この記事では、私が2018年当時、研究室や近い研究分野の先輩からどのように情報収集を行ったのかについてお話します。
研究分野によって、また聞く相手によって得られる情報、それを踏まえて行う決断はまちまちです。
なので、具体的な内容が直接には参考にならないかもしれませんが、知り合いから情報収集するときに、どのような視点で望めばよいかイメージが湧くはずです。
みなさんの転職活動の参考にしてみてください!

Abstract | 研究コアスキルが活きるエピソードを収集する

博士・ポスドクの転職において、転職エージェントを通じての情報収集に加え、自分と似たバックグラウンドを持つ博士・ポスドクで、民間企業に就職した知り合いから情報収集できると、研究で培ったスキルを活かして民間企業で活躍するイメージを作ることができます。

博士・ポスドクが民間企業で活躍するには、研究コアスキルを活かすことが重要です。
業種・職種・年収などの全体像を掴むことは、元研究者のブログなどから情報を収集することができますが、どの研究コアスキルが、民間企業の業務のどのような場面で活用できるのかを知るためには、自分と似たバックグラウンドを持つ先人から具体的なエピソードを聞く必要があります。
このようなエピソードがあると、職務経歴書に具体的に書くことができ、採用する企業の側にも、応募者が活躍するイメージを湧かせることができます。

知り合いから直接聞く際には、ほどよい深さと具体性の情報を得ることが重要です。
業種や職種が多少違っても研究コアスキルが活かせる場面はどこなのかを探ることです。
そもそも研究コアスキルとは、一般的なスキルよりは専門的で、その研究でしか活かせないほど専門的ではない深さと広さのスキルです。
それを活用できるエピソードも、一般的でもなくその企業でしか活きないほど狭くもないものである必要があります。
ほどよい深さと具体性の情報を得るということに留意しながら、情報収集をしてみましょう!



Background | 全体イメージを掴んだ上で、個別の疑問をどうするか

博士・ポスドクが転職を行う際、業種・職種・年収などの全体像を掴むことは、元研究者のブログで情報収集できることを前回記事でお伝えしました。
これで、転職エージェントと面談をして、どの業種・職種にどのくらいの希望年収で応募するかを決めることができます。

次の関門は、職務経歴書などに、民間企業で活用できそうな研究コアスキルを具体的なエピソードとともに盛り込んでいくことです。
そのためには、広く浅い情報ではなく、自分と同じ研究分野やバックグラウンドを持った先輩や同期など、知り合いから直接得られる情報が役立ちます。

修士や博士から民間企業に行った知り合いに連絡を取ってみましょう!
そして具体的なエピソードを深堀りして聞いてみましょう!
この記事では、深堀りする際の着眼点をお話します!



Contents | 知り合いから直接得られる情報

自分の研究室の先輩で民間転職した人や同じ研究分野から民間転職した人から、直接話を聞くことも重要です。
ポスドクの民間転職のポイントは、研究で培ったコアスキル(詳しくはこちら)で活躍できる企業を選ぶことです。

研究でどのようなスキルを培ってきたかは、研究分野に依るところが大きいです。
研究室の先輩など、同様のコアスキルを持った人がどのように活躍しているのかを知ることは、企業を選ぶ上で参考になります。
特に「研究がどのように活かせているのか」について具体的に聞いておくと、職務経歴書や面接で研究のエピソードを語る際、その企業の業務のどこでそのエピソードが活きてくるかを伝えることができるようになります。

直接の知り合いから情報を収集できるメリットは、具体的なエピソードを掘り下げることができることです。
しかも、ある程度バックグラウンドを共有しているため、その人のエピソードを自分のエピソードにつなげて考えることがしやすい利点もあります。

一方で、直接の知り合いから得られる情報の範囲は限られているため、転職活動の全体像を掴むことは難しいです。
例えば、私の周りでは、前回の記事でも書いたとおり、大手メーカーの技術者が多く、業種・職種のイメージはどうしても偏ってしまいます。

そこで、直接の知り合いから情報を得る場合には、全体像よりも個別のエピソードにフォーカスすべきです。
例えば、メーカーの光学センサーの開発をしている人から話を聞くのであれば、メーカーやセンサーの開発の話は参考にならないかもしれません。しかし、業務の中で

  1. 実験計画を立てる
  2. 実験を行う
  3. 結果をまとめる
  4. 結果を解釈する
  5. 次の計画を建てる

という作業をやっており、この作業が研究と同じという話を聞けば、「仮説検証のフレームワーク(研究コアスキルの一つ)が活用できているエピソード」として参考にすることができます。

以下では私が実際に2人の先輩から情報収集した際のお話を紹介します!
参考までにご覧ください!

大手メーカー研究開発職の先輩のお話 | 仮説検証フレームワークが活きる

一人目の先輩は、私の研究室の先輩です。
この先輩は私と同様、観測系の天文学者で、修士課程では主に観測装置の開発、博士課程では観測データ解析を軸に研究をされていた方です。
博士を取得した後、ポスドクにはならずに新卒で大手メーカーの研究開発職として就職しました。

この方が従事している業務は、光学センサーの研究開発です。
天文学の観測装置の開発では、光学センサーを搭載する真空冷却容器(デュワー)を設計したり、光学センサー(天文学では主にCCD)の実験を行います。
光学センサーの実験は、読み出しノイズという雑音をへらすために、やまほど実験をします。
なるほど、確かに、光学センサーの研究開発業務には研究の経験がかなり活用できていることがわかります。
ただ、この情報だけだと、私の転職活動には活用することができません。

活用するには、もう少し具体的なエピソードを聞く必要があります。
そこで、私は業務の進め方を質問し、

  1. 実験作業の進め方
  2. 実験報告の進め方

の2点に研究室での経験が活きていることに気が付きました。
1つ目の実験作業の進め方は、前述の通り、実験計画を立てて、結果を出し、検証するという、「仮説検証のフレームワークが活用できるエピソード」のことです。

2つ目は、実験結果をまとめて報告する部分です。
研究室では、装置開発の実験の進捗を週1のミーティングで教授や研究室メンバーに報告します。
ちなみに天文学の研究室は小さいので、教授1人、助教2人に学生が各学年1人程度です。

学生の研究テーマはそれぞれ違うので、この報告で共有されるまで他のメンバーが何をしているのかは知りません。
この報告では、

  • 実験の目的
  • 実験の方法
  • 実験の結果
  • 今後の方針

を簡潔にまとめて伝える必要があります。

この先輩の業務でも、実験の進捗を上司を含むチームメンバーに週1で報告するそうです。
そこで進捗を共有し、実験を進めるのか止めるのか、方法を変えるのか意思決定をしていくそうです。
その報告では限られた時間で的確に実験の概要を伝える必要があります。
実験の概要を簡潔にまとめて伝える研究室時代の訓練が役に立っていると、その先輩は言っていました。

「実験の概要を簡潔にまとめて伝える」というのはかなりソフトなスキルなので、「自分のスキル」として一言で伝えるのはやや難しいです。
しかし、「研究室での進捗報告で実験結果をわかりやすくまとめて伝え、装置開発を成功させた」というエピソードを職務経歴書に書くことで、このスキルが持っていることを説得力を持って伝えることができます。

私自身も装置開発をやっていたため「実験の進捗を簡潔に伝えて装置開発を成功させた」といった内容を職務経歴書に書きました。
しかし、もしこの先輩の話を聞いていなかったら、わざわざ書かなかった可能性が高いです。
このように、直接の先輩から話を聞くときには、「エピソードがあると意味をもつスキル」に注目すると良いでしょう。

大手メーカーシステム開発エンジニアの先輩のお話

二人目の先輩は、別の研究室の先輩です。
直接話したことは2、3度でしたが、転職するにあたって連絡を取り話を聞きました。
この先輩は、観測系天文学者であることは私と共通していますが、電波を使った観測を軸とした研究をしており(私は可視光と近赤外線)、装置開発はやっていません。
博士を取得した後、新卒で大手メーカーで人工衛星のシステム開発エンジニアになった方です。

民間企業で活かせる研究コアスキル | 改めて気づいた研究コアスキル

この方とは以下のようなやり取りをしました。

Kaiko(私)
Kaiko(私)

先輩はどのような仕事をされていますか?
また、博士の研究経験が役立つ場面はありますか?

先輩
先輩

衛星のシステム設計をやっています。
物理の知識は広く使っていますが、博士のと言われると微妙です。

問題発見力、論理的思考力、論理的文章力は鍛えられていました。

あと、英語の資料を読む機会が多いので、論文を読み込んでいた経験が役に立ちます。

Kaiko
Kaiko

なるほど!
「英語の資料を読む」については考えたことがなかったので、参考になります!

このやり取りで、以下の研究コアスキルが役立っていることがわかります。

  • 物理学の知識
  • 問題発見力、論理的思考力、論理的文章力←仮説検証のフレームワーク(以前記事参照)
  • 英語のロジカル文章を読み書きする能力

英語のロジカル文章を読むことについては、研究者であれば英語の論文を読み漁るのは当たり前ですし、天文学の論文は基本的に英語で博士論文も英語が当たり前なので、あえてスキルとして捉えてはいませんでした。
このやりとりで、単なる「英語力」ではなくて「英語の資料を読むこと」や「英語のロジカル文章を読み書きする能力」を改めて研究コアスキルとして捉え直すことができました。

システム開発という職種を選択肢から外した経緯 | 最大のコアスキルが活かせるか?

さて、この先輩に話を聞いている頃、私が民間企業で活用したい研究コアスキルとして、プログラミングを念頭においており、すでにデータサイエンティストという職種をメインに検討していました。
大手メーカーのシステム設計者という職種がどのようなものなのか、プログラミングは活用できるのかについての情報を仕入れました。

Kaiko(私)
Kaiko(私)

システム設計というのはどのようなものですか?
ソフトウェアの開発とか、プログラミングを使う機会はありますか?

先輩
先輩

システム設計はV字開発です。
V字開発全体の設計をしています。

衛星のV字開発では、まずはシステム全体についての要求を、サブシステムレベル、さらに衛星に搭載される機器レベルに分解(フローダウン)していきます(V字開発の左側)。
この段階で、サブシステムや機器が上位の要求を満たすように、これらの機能を設計します(配分設計)。

それから、サブシステムを組み上げて検証する段階(V字開発の右側)では、できあがった機器からサブシステムへ、サブシステムからシステムへ組み上げる際に、それぞれのレベルで要求(配分設計)を満たせているかの検証を行います。

システム開発とは、このような配分設計と検証を行うことです。
全体の設計と検証を行うので、プログラミングを使うことはほとんどないです。

このように、業務内容をかなり詳細に聞くことで、プログラミングや統計学など、データサイエンス的なスキルは活用できないということがわかりました。

実は大手メーカー系SIerでシステム開発をやっている別の先輩からもシステム開発の話を聞きました(この方は博士卒ではなく、工学系の修士新卒で就職しています)。この方の話でも、この大手メーカー系SIerのシステムエンジニアはシステムの要件を定義したり検証したりする、いわゆる上流工程なのでデータサイエンス的な能力が要求されたり活かせる機会はあまりないとのことでした。

参考にできる情報とできない情報 | 必要な情報を得るための留意点

直接の知り合いから狭く深く情報を収集すると、参考にできる情報とできない情報があります。
私の場合は、大手メーカーの研究開発職、システムエンジニアに話を聞きました。

参考にできたは、研究コアスキルが業務のどのような場面で活用できるのか、業種や業務内容に大きく依存しないレベルのエピソードです(仮説検証のフレームワーク、論理的文章力、英語資料の読解など)。
一方で、業種や具体的な業務内容に依存する部分、例えば、光学実験やシステム開発などは、同じ業種・職種に就かなければ参考にすることはできません。
私の場合は、大手メーカーに転職することはせず、また研究開発職でもシステムエンジニアでもない、データサイエンスという職種を選びました。
したがって、業種や具体的な業務内容に依存する情報は参考にはできませんでした。
ただし、もしシステムエンジニアになったら、プログラミングや統計学で突き抜けて活躍するのは難しそうだという情報が得られたので、その意味ではかなり参考になったとも言えます。

参考にすべきは、研究コアスキルにまつわるエピソードです。
研究コアスキルとは、ジェネラルなスキルよりは専門的なすきるだけれども、研究の専門分野でしか活用できない専門スキルよりは守備範囲の広いスキルです(詳しくはこちらの記事)。
研究コアスキルを民間企業で活用するエピソードも「一般的な話ではないけれども、その企業でないと通用しないような専門的な話でもない」ぐらいの、ほどよい深さのエピソードを引き出すことを心がける必要があります。

ほどよい深さのエピソードを引き出せるよう、利き手側で質問の深さを上手にコントロールしたり、回答を自分の中で解釈・消化してまとめることが重要です。
聞かれる先輩や動機の側としては、どうしても一般的になりすぎたり、具体的に話すあまり、企業に特化した話をしてしまうことはよくあります。
どのような情報をどのような深さで引き出すのかに注意しながら情報収集をしていきましょう!



Conclusion | まとめ

最後までご覧いただきありがとうございます!
直接の知り合いから、転職活動で有用な情報を得るプロセスについてお話しました!

直接の知り合いから情報を収集できるメリットは、具体的なエピソードを掘り下げることができることです。
民間企業で活かせそうな研究コアスキルをエピソード付きで語れるようになるために、「エピソードがあると意味をもつスキル」に注目しながら情報を収集しましょう!

以上「転職レシピ|天文学系ポスドクの民間転職(情報収集編その3)」でした!
またお会いしましょう!Ciao!

コメント

タイトルとURLをコピーしました