お金のレシピ|お金は額面以上の価値を生む可能性を持つ(貨幣の時間価値編)

野辺山観測所 お金
お金を正しく使えば、額面以上の価値が生み出されます。だから金利が生まれます。

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今日は転職レシピ派生シリーズ、お金のレシピです!
お金のレシピの第2回では、貸し手から見た金利の正体とリスクの関係についてお話しました。
今回は借りてから見た金利の正体、そして貨幣の時間価値についてお話します!

お金は持っているだけで、金利がついて勝手に増えます。
これってすごく不思議ですよね?
銀行の預金は信用リスクがないにも関わらず、金利がつくのはなぜなのか?
今回はこれを掘り下げることで、

  • お金を使うことの社会的意義
  • 投資を行うことの社会的意義
  • 貯金を不必要に増やすことによる機会損失

が見えてきます。

貯金や投資といった資産運用の基礎を知りたいという方、ぜひ一緒に学んでいきましょう!

Abstract | 手元のお金は額面以上の価値になり得る

信用リスクのない銀行預金の金利は、貨幣の時間価値に由来します。
借り手にとっては、「いま手元にあるお金」は額面以上の価値があります。
だから金利を払ってでも、いま手元にお金を用意したいのです。

なぜ「いま手元にあるお金」に額面以上の価値があると考えるのでしょうか?
それは、誠実なビジネスに対して、消費や投資などでお金を使うことで、新たな価値が生まれるからです。
例えば、株式投資は、投資先の会社が新たな価値を世の中に生み出すための原資となります。
新たな価値を生み出せる会社に投資することで、

  • 世の中のお客さんは良い商品やサービスを手に入れる
  • 会社は利益を手に入れる
  • 株主は利益の一部を手に入れる

という三方良しの状態が生まれます。
株主が利益の一部を手に入れるだけでなく、世の中に存在するトータルの価値が増えます。
これは投資に限った話ではなく、消費についても同じです。
値段が高いものではなく、本当に価値があるものや自分が価値を感じるものにお金を使えるといいですよね。

また、新たな価値が生まれるスピードが早いほど金利も大きくなります。
日本で言えば、高度経済成長期のように新たな価値がどんどん生まれていた時代にはリスクのない預金金利も高くできたわけです。
低成長の現代ではそうはいかないので、ある程度リスクを取らないと金利を得ることが難しいです。

Background | 貨幣の時間価値を知ろう

銀行預金(信用リスクなし)に金利がつく理由は?

信用リスクが存在しない銀行預金に金利がつくのはなぜでしょうか?
お金のレシピ第2回では、貸し手から見た場合の金利はリスクの対価と説明しました。
銀行預金は元本が保証されているため、信用リスクはありません(信用リスクの詳しい説明は第2回の記事をご覧ください)。
貸し手にとっては流動性リスクのみがありますが、普通預金であればいつでも引き出せますし、定期預金でも元本割れすることはないので流動性リスクも非常に小さいです。
貸し手側から考えただけではクリアには見えてきません。

Wikipediaの利子の記事を見ると、「理論的には無リスク資産に付される金利は貨幣の時間的価値のみを反映したものである」と書かれています。
まだ何のことだかわかりませんね(貨幣の時間価値については後で説明します)。

そこで、借り手の銀行側から見た場合を考えてみます。
銀行のビジネスはお金を保管しておくことではありません。
銀行のビジネスは、

  • 外部から資金を調達する
  • 調達資金をもとに、外部にお金を貸し付ける

ことです。
お金を貸し付けるとき、調達したときよりも高い利率を設定することで、「利ざや」を確保します。
この利ざやによって、銀行は利益を上げることができます。
ポイントとなるのは、銀行は手元に持っているお金を貸し付けているわけではないことです。

借り手にとって「いま手に入るお金」には額面以上の価値がある

銀行はお金を貸して金利で利ざやを取って儲けるビジネスなので、「いま貸すためのお金」がほしいということになります。
例えば、銀行が1000万円を1年間貸し付けて、1年後に100万円の利息を受取るとします。
銀行がいま1000万円を調達できなければ、1年後の利息を受け取ることはできません。
逆に、いま1000万円を調達できれば、1年後の利息を確保できます。
銀行にとって、「いま手に入る1000万円」は1000万円以上の価値があります(ただし1100万未満です)。
もっと言えば、銀行から融資を受ける人間は「いま手に入る1000万円は1年後の1100万円以上の価値がある」と考えているわけです。

このように、借り手からすれば「いま手に入るお金は、将来の同額のお金よりも価値がある」と考えていることになります。
これが貨幣の時間価値ということになります。
ロバート・キヨサキ氏による「金持ち父さん貧乏父さん」では、「お金の価値はみんなが価値があると思うから発生している」といった記述があります。
時間価値は、「いま手に入るお金は、将来の同額のお金よりも価値がある」と考える人が大勢いるという事実から発生しています。
これはお金に限らずですが、ファイナンシャル・リテラシーの文脈では、物事の価値は額面と異なる場合があることを知っておく必要があります。

貨幣の時間価値について教わるとき、よくある問いは

  • いまもらえる100万円と来月もらえる100万円のどちらの価値が高いか?

というものです。
貨幣の時間価値の概念を知っていると当然「いまもらえる100万円」と答えます。
根拠として「金利がつくので、今もらえる100万円を運用すれば来月には100万円以上になっているから」というのがよくある例です(最近ではSBJ銀行の1週間定期預金なるものもあり、ノーリスクでわずかながら1ヶ月でも金利が付く場合があります)。
ただ、なぜ金利がつくのかというと、「いまもらえる100万円」を100万円以上の価値があると思っている誰かがいるからです。哲学的な答えはこちらになるのかなと思います。

Contents | いま手に入るお金は額面以上の価値を生みうる

なぜ借り手にとって、「いま手に入るお金」が額面以上の価値を持つのかというと、それはそのお金を使うことで額面以上の価値を手に入れる事ができるからです。

例 | 誠実なビジネスにお金を流すと世の中が豊かになる

お金が額面以上の価値を生む例を一つ紹介します。
迫佑樹氏による「人生攻略ロードマップ 「個」で自由を手に入れる「10」の独学戦略」に記載されているものです。
登場人物は以下の3人です。

  • A社: パソコンショップをやっている会社
  • Bさん: フリーランスのエンジニア
  • Cさん: フリーランスのデザイナー

まずBさんの手元に10万円があります。
Bさんは、A社のパソコンショップからパソコンを10万円で買いました。
この時点で、Bさんの手元にはパソコン、A社には10万円が存在します。

次に、A社はCさんに、自社サイトのデザインを10万円で発注しました。
この時点で、Aさんの手元にはきれいに仕上がった自社サイト、Cさんの手元には10万円が存在します。

最後に、CさんはBさんに、決済システムの開発を10万円で発注しました。
この時点で、Cさんの手元には決済システムが、Bさんの手元には10万円が存在します。

10万円が
Bさん→A社→Cさん→Bさん
と一周回っただけですが、

  • Bさんは、10万円とパソコン
  • A社は、自社サイト
  • Cさんは、決済システム

を手に入れています。
仮に、パソコンも自社サイトも決済システムも10万円の価値を持っていたとすると、3人の富の総量はもとの10万円から40万円に増えたことになります。

このように、お金を誠実なビジネスの世界で使うと新たな価値が生まれます。
最初にあった10万円に額面以上の価値があるのはそのためです。
「誠実な」と書いたのは、この例の途中過程で生み出されたパソコンや自社サイト、決済システムが不良品で価値がなかったり、マイナスの価値を持っていたら、新たな価値は生まれません。
この例の中で迫氏は、世の中を良くするために誠実なビジネスを営むことの重要性を主張しています。
ここではさらに、お金を使う側、すなわち消費者や投資家も本当に価値のあるものにお金を使うことで世の中を良くしていくことができることもつけ加えておきます。

お金を使うことの社会的意義|自分と誰かの価値になる

価値があるものにお金を使うことで、自分も新たな価値を手に入れることができ、また他の誰かも新たな価値を手に入れることができます。
上の例では、Bさんは10万円を使ったことで、結果的に10万円とパソコンを手に入れました。
Cさんは10万円が回ってきたことで決済システムを手に入れました。

自分にとっての価値と他の誰かの価値を生めるかどうかは、価値あるものを見極めてお金を払えるかどうかにかかっています。
本当にいいものを選んでお金を払うこと、そのお金を価値あるものに払ってくれる相手にお金を払うことが重要です。
どんなことに価値を感じるかは人それぞれです。
大抵はどんなことにお金を使っても、どこかの誰かの役には立ちます。
自分が本当に幸せになれることにお金を使っていくのが重要です。
私がよく見ているYouTubeチャンネル、リベラルアーツ大学の両氏の言うところのお金を「使う力」ですね。

投資の社会的意義|自分だけでは生めない価値をどこかで生む

投資は、出資したお金を使って額面以上の価値を生み出してくれる誰かにお金を差し上げる(融資であれば貸し出す)行為です(株式であれば返済義務はない)。
出資者は、その誰かが生み出した価値の一部を手に入れることができます。
株式投資であれば、投資先の会社が新たな付加価値を生み出して利益を上げた結果、その一部が配当として返ってきたり、配当がない場合にも企業価値の拡大という形で株価が値上がりすることで出資者の利益になります。
自分の代わりにお金が誰かのもとで働いてくれていると考えても良いでしょう。
自分だけでは決して生み出すことのできない価値を、お金がどこかの誰かのもとで生み出していることになります。

重要なことは、お金を使うときと同様に、「額面以上の価値を生み出してくれる誰か」にお金を渡すことです。
株式投資なら、成長している会社やこれから成長しそうな会社、価値を生み出してくれる会社に期待してお金を渡すことが重要です。
そう考えると、価値を投資はギャンブルではないことが理解できると思います。
ただ、将来、額面以上の価値を生み出してくれるかどうかは予測できないので、不確定性 = リスクが大きいとも言えます。

必要以上の貯金を持つことによる機会損失

お金は正しく使うことで新たな価値を生み出します。
必要以上の貯金をしてしまうことで、本来は正しく使われて世の中に新たな価値を生み出すはずだったお金が働かずに眠っていることになります。
不必要な預貯金の分だけ、世の中に新たな価値が生まれる機会を失っていることになります。
お金は動かして価値が出るツールなので、銀行の普通預金やましてタンス預金などはお金を牢屋に換金しているような状態です。

金融庁によれば、10年以上取引がなく預金者等が名乗りをあげない休眠預金は毎年1200億円発生しています。
もしこのお金が誠実なビジネスの世界に流れたら年間1200億円以上の価値を生んでくれるはずです(金融庁がWebページで告知している休眠預金等活用法はそのためのものです)。
休眠預金等活用法が2019年度に思考される以前は、少なくとも毎年1200億円の期間損失が発生していたことになります。
ちなみに、日本銀行による預金者別預金額の統計では、2020年3月末時点で、個人預金の国内銀行普通預金口座に303兆円が眠っています。
資金流動性(いざというときにすぐに使えるお金)を確保する上で、金融資産の一部を預金で持つことは必要ですが、仮に三分の一が不要な預金だったとすると、国家予算(2020年度当初予算; 103兆円)の3倍近い額になります。
仮に、この三分の一を年利5%(株式投資の標準的な利率)で運用できれば、国家予算の5 %ぐらいがまかなえてしまうことになります。
実際にはどれだけが不必要な預金なのかはわかりませんが、日本にはかなり大きなお金が働かずに眠っている可能性があります。

Conclusion | まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございました!
お金が新たな価値を生む仕組み、それによって生じる貨幣の時間価値と金利の関係のお話でした!

今回はだいぶ哲学的な内容でした!
お金の哲学については様々な考え方があると思いますので、みなさんもそれぞれに考えてみてくださいね。
金利や貨幣の時間価値が発生する理由に思い巡らすと、お金が生み出す価値や投資の意義が見えてきます!

以上、「お金のレシピ|お金は額面以上の価値を生む可能性を持つ(貨幣の時間価値編)」でした!
またお会いしましょう!Ciao!

References | 参考

  • 迫佑樹氏監修のYouTubeチャンネル: リンク
  • 両氏のYouTubeチャンネル: リンク
  • 金融庁の休眠預金についてのWebページ: リンク

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