転職レシピ | 天文学ポスドクの応募書類作成術3: 職務経歴書の「経験・スキル」欄に研究コアスキル盛り込む方法

転職
企業側の担当者が具体的なイメージを持てるレベルで具体的に書きます。

Ciao!みなさんこんにちは!このブログでは主に
(1)pythonデータ解析,
(2)DTM音楽作成,
(3)お料理,
(4)博士転職
の4つのトピックについて発信しています。

今回は転職レシピ、応募書類の準備についてお話します!
転職活動成功のポイントは職務経歴書で自分の強みと活躍可能性を伝えることです。
博士・ポスドクの場合、研究の経歴と研究で培ってきた「研究コアスキル」を企業に伝えることが大切です。転職サイトには職務経歴書の書き方がたくさん載っていますが、ほとんどサラリーマン向けの情報なのであまり参考になりません。

この記事では、職務経歴書の「経験・スキル」欄の書き方をご紹介します!
博士・ポスドクの民間転職活動では、研究で培ってきた経験やスキルを具体的に表現して即戦力性を伝えることが重要です。観測・実験系のポスドクだった私がデータサイエンティストとして民間企業に転職したときの例もお見せします!観測・実験系以外の博士・ポスドク方にもエッセンスを参考にしていただけるはずです。

博士・ポスドクとしての研究経験やそこから得られるスキルは民間企業でも活かすことができます。
どの能力が活かせるのか、活かしたいのかを主張して即戦力であることをアピールしましょう!
企業に「活躍してくれそうだ」と思わせることが転職成功の鍵です!
どうぞ最後までお付き合いください!

Kaiko
Kaiko

この記事は以下のような人におすすめ!

  • 民間企業への転職・就職を考えている博士・ポスドク
  • 研究経験を活かして転職したい方
  • データサイエンティストとして転職を考えている方

Abstract | 経験・スキルはキーワードで具体的に書く

職務経歴書の「活かせる経験・知識・技術」の欄では、企業側の実務担当者や現場責任者が読んでイメージが湧くレベルで具体的に書きます。博士・ポスドクから民間企業への転職では、研究の中で培ってきた経験やスキルから転職先でも活かせそうなもの(=研究コアスキル)を整理して書く必要があります

普段、専門分野の研究をしていると「研究でやっていることの中で民間企業で活かせるものは少ない」と思い込みがちですが、研究コアスキルを棚卸しすれば、研究でやっていることの大部分は民間企業でも活用できることがわかります。転職先の職種のキーワード(例えばデータサイエンティストならデータ分析の手法など)を使って研究と民間企業の業務の接点を具体的に書きましょう!



Background | 研究の経験・スキルで差別化を狙う

職務経歴書の「活かせる経験・知識・技術」の欄は他の候補者やすでに転職先企業に存在する人材との差別化を図り、即戦力性を伝えるための項目です。ここで、研究で培ってきた経験やスキルで差別化を図れると、内定だけでなく、提示年収のアップ、転職後の役割の明確化など転職成功につなげることができます。

差別化する相手は博士・ポスドクではなく学部卒・修士卒のサラリーマン

博士・ポスドクにとって、ここで差別化をする相手は博士・ポスドク出身者ではなく、学部卒や修士卒で民間企業に就職した大多数のサラリーマンです。このような相手に対して自身の強みや特色を明確化していきましょう。そうすると、研究の文脈においての強みやその研究分野での自身の強みだけでなく、自身の研究者としての強みを考えることができるので、自身の強みや特色の幅が広がり、民間企業との接点を探りやすくなります。例えば、銀河や星に関する知識や経験はあくまでも天文学の研究分野での強みですが、データ分析や統計学の知識といったものは研究者としての強みであって民間企業でも活用できます。

アピールすべき自身の強みはポスドクのジョブハントとは異なる

博士・ポスドクとして研究活動をしていると、差別化のポイント(自身の強みや特色を作るポイント)を見失いがちです。研究のコアとなる能力、例えば、データ分析、仮説検証、文書作成、英語、統計学などは、専門分野の知識や経験に比べるとあまりにも基礎的すぎて研究の文脈では差別化のポイントになることはほとんどありません。ポスドクの応募書類でこれらの能力をアピールすることはほとんどなく、自身の研究の独自性や将来性やその専門分野での自身の強みをアピールすることでしょう。対して民間企業への転職では研究者としての強みをアピールすることがポイントです。博士・ポスドクから民間企業への転職活動はポスドクとしてのジョブハンティングとはアピールするポイントが異なることに注意しましょう。

以上を踏まえた上で、職務経歴書の「活かせる経験・知識・技術」欄の書き方を具体的に見ていきましょう!



Contents | 活かせる経験・知識・技術の書き方

概要の次の欄には転職先で活かせる経験・知識・技術を具体的に書きます。この欄に目を通す企業側の人員は現場で業務を行う従業員や現場の業務内容を理解している管理職ぐらいが見ると思って書けば良いでしょう。

企業側はここに書かれている内容をもとに、転職後にどのような業務を担当してもらうか、担当してもらいたい業務をこなす能力があるのかを見極めます。実際、私も現職の民間企業(大手コンサル)で採用面接を担当することがありますが、事前にこの欄に目を通してどの程度の業務ができそうか見極めて質問します。

書類通過後の面接の材料にもなるので、研究の中で使ってきたスキルを具体的に書いていきましょう。以下で詳しく見ていきましょう!

研究コアスキルを整理して具体的に書く

博士・ポスドクなら研究で培ってきた経験やスキルから民間企業でも活かせるものを整理して書きましょう。研究で培ってきた経験やスキルの大部分は民間企業でも活かすことができます。詳しくは過去記事「転職レシピ|博士は研究コアスキルを活かして民間企業で活躍できる」にまとめてあります。その研究分野の専門知識(天文学であれば、星や銀河の知識)を活用することは流石に難しいですが、一階層下がったもの、例えばデータ解析の手法、統計学の知識、物理学の知識、仮説検証や実験の経験は民間企業で活用することができます。

キーワードで読み手が具体的なイメージを持てるように書く

この欄で書く研究コアスキルには具体性が必要です。応募先の職種に適合したキーワードを入れると具体的にすることができます。例えばデータサイエンティストであれば、

  • やったことのあるデータ解析の概要
  • データ解析に用いた手法
  • 使えるプログラミング言語

を書くと具体的になります。データサイエンスの分野で使われるキーワード(多変量解析、回帰分析、最小二乗法、モンテカルロシミュレーション、統計検定などなど)をしっかり入れられると読んだ人に具体的にイメージしてもらいやすいです。このあたりの専門用語をどのくらい使うかについては後述します。

アカデミックな知識も強みとして書ける

また、博士・ポスドクならアカデミックな知識があることも強みとして書くことができます。例えば、アカデミックデータサイエンティスト(過去記事「転職レシピ|データサイエンティスト3類型(博士・ポスドクの研究経験を活かすアカデミック系データサイエンティスト)」参照)なら、統計学を中心に数学、物理学など、分析手法についての背景知識があることもアピールできると説得力が増します。民間企業でデータ分析をやっている方の多くは、本格的な統計学をしっかり学べるほどの時間はないので、理論的な背景を知らずに分析をしていることが多いです。理論的な背景を知っている人材は応用ができたり、問題が発生したときに的確に対処できるといった強みがあるので希少価値が高いです。理論的な背景知識も持っているし実戦経験もあるということがアピールできると良いでしょう。

論文、学会発表、国際経験も忘れずに書く

博士・ポスドク出身者なら、この他に論文や提案書などの文書作成スキル、学会発表などのプレゼンスキル、国際会議での発表や国際共同研究など英語や海外経験もアピールできます。このような研究コアスキル(過去記事「転職レシピ|博士は研究コアスキルを活かして民間企業で活躍できる」参照)をしっかり書けると、企業側担当者に即戦力性と特長を理解してもらうことができるでしょう。



専門用語は転職先の分野で広く使われているものならOK

具体的なスキルを書くには専門用語を使うことも必要かもしれません。
このときに使う専門用語のレベルは低すぎず高すぎずのレベルにしておきましょう。
読むのは現場で実務を行っている人間なので、広く使われている専門用語であれば問題ありません。
例えば、PythonやC言語、回帰分析、主成分分析、統計検定といった用語は専門的ではありますが、データサイエンスの世界では広く使われている言葉です。
このレベルの用語であれば問題ありません。
逆にもっと専門的な、例えばある研究分野でしか使わないような専門用語は避けましょう。
天文学なら、銀河、系外惑星、超新星爆発、完全空乏型CCD、補償光学といった言葉がありますが、天文学をやっている人しかわかりません(場合によっては天文学をやっていてもわからない)。
研究経歴の方では書いても良いですが、スキルの欄にここまで専門的な内容を書くべきではありません。そもそもスキルの欄には専門スキル(その研究分野でしか活かせないもの)ではなく、研究コアスキル(分野が変わっても活かせるもの)を書くはずなので、そこまで専門的な用語は必要ないはずです。

データサイエンティストの場合 | 基礎レベルの教科書を参考にスキルをまとめる

記載するスキルは基礎レベルの教科書を参考にすると良いかもしれません。
データサイエンティストとして転職するのであれば、統計分析の手法、プログラミング言語、Pythonのパッケージの名前といったレベルで具体的に書きます。天文学の研究では様々な統計分析の手法を用いますが博士・ポスドク時代はその手法の呼び方などを知らずに当たり前に使っていました。当たり前に使っていたのでスキルとも思っていなかったぐらいです。

天文学以外の研究でも、実は世の中的には一般的な名前がついていて立派なスキルとしてリストアップできる分析手法を用いているにもかかわらず、当たり前に使いすぎていてスキルとして認識できていないこともあるでしょう。
データサイエンスの基本的な教科書に目を通すと、このようなスキルを整理することができます。
私は下記の教科書を読みました。アマゾンのリンクを入れておきますので興味があればどうぞ!

  1. データサイエンティスト養成読本 機械学習入門編 (Software Design plus)
  2. 改訂2版 データサイエンティスト養成読本 [プロになるためのデータ分析力が身につく! ] (Software Design plus)
  3. データサイエンティスト養成読本 登竜門編 (Software Design plus)
  4. データサイエンティスト養成読本 R活用編 【ビジネスデータ分析の現場で役立つ知識が満載! 】 (Software Design plus)

データサイエンティストとしての転職を考えているけれども、具体的にどのような分析をするものなのかよくわからないといった方はとりあえず上記の1「機械学習入門編」に目を通しておけば良いでしょう。だいたいどのような手法が使われているのか、自分の研究で使ってきた手法はどれなのかがわかるはずです。



研究コアスキルの書き方の具体例

私がポスドクからデータサイエンティストに転職した当時は下記のように書きました。
この具体例のポイントを以下で解説します!

活かせる経験・知識・技術 
・ C言語: 画像解析, データ分析, 科学計算, ファイル処理. 信号雑音比の低い画像から天体の明るさや形状を測定するソフトウェアの開発や, 最小二乗法を用いたモデルフィッティングやモンテカルロ・シミュレーションによる誤差推定などを自ら開発したコードで行いました. 
・ python: numpy, scipy, scikit-learn, matplotlibなどの各種ライブラリを用いた画像解析, データ分析, 科学計算, ファイル処理. 天体画像のセグメンテーション, モデルフィットなどの画像解析や, スピアマンの順位相関やコルモゴルフ・スミルノフ検定などの統計検定, 主成分分析を用いたデータ分析を行いました. 
・ その他のソフトウェア: Shellスクリプトを用いた処理の自動化, C++やperlでの簡単なプログラミング, SQLのプログラミングを行ってのデータ抽出の経験があります. 
・ Latex: TexShop, Overleafを用いた文書作成. 
・ 統計学・分析手法: 確率, 相関解析, 統計検定, データモデリング, パラメータ推定, 多変量解析(回帰分析など), 誤差解析. 
・ 英語: 査読付き国際科学誌で主著論文1本の執筆, 審査員として国際科学誌論文1本の査読, 海外でのセミナーや国際会議での英語での発表を行っており, 入念な準備を行えば英語を使った業務にも対応可能です. 

博士・ポスドク→データサイエンティストなら分析手法を軸に具体的に書く

この例では強みとなる経験やスキルをキーワードを使って具体的に書いています。
最初の3項目「C言語、python、その他ソフトウェア」では、プログラミング言語で分類してデータ分析の経験を整理しています。ここでは

  • 画像解析
  • データ分析
  • 科学計算
  • ファイル処理
  • ソフトウェア開発
  • データ抽出

といった抽象的なキーワードで経験の幅広さを出しつつ

  • 信号雑音比
  • 最小二乗法
  • モンテカルロシミュレーション
  • セグメンテーション
  • スピアマンの順位相関
  • コルモゴロフ・スミルノフ検定
  • 主成分分析

などの分析手法を入れています。DODAをはじめ、複数のエージェントから分析手法は具体的に書くようにアドバイスを受けました。このくらい踏み込んで書くことで、データ分析の知見がある方なら、どのようなデータ分析をしてきたのか具体的にイメージできるはずです。

アカデミックデータサイエンティストとしての強みも入れる

分析手法に関する理論的な知識など、アカデミックデータサイエンティストとしての強みも書いています。「統計学・分析手法」という項目の中身は上の項目と被ってしまっていますが、あえてこの項目を設けてプログラマーではなく、データサイエンティスト(統計学を使ってデータから価値を生み出す者)としての強みを補強しています。分析手法に関する理論的な背景を知っていることをアピールしています。

また、「C言語」の項目では「自ら開発したコード」とわざわざ書いて、誰かからもらったコードを流用したり、既存のライブラリを適用するだけでなく自分でコーディングができることをアピールしています。

英語は思っていた以上に強みになった

英語の経験は「英語」として盛り込みました。英語は当時考えていた以上に転職活動中および転職後の強みになりました。博士・ポスドクで研究をしていると毎日当たり前に英語の論文を読み書きし、非日本語話者の共同研究者と議論して国際会議で発表するなど、研究業務として英語を使う機会があります。一方で、日本の民間企業のサラリーマンには英語を業務で使ってきた経験がある人は非常に少ないです。機会は多くはないとはいえ民間企業でも英語が必要になる場面はそれなりにあって英語が少しでもできると重宝されます。英語に自身がなくても研究で英語を使ってきた経験は必ず書くべきです。

他に盛り込んでも良かった項目 | 文書作成、プレゼン

文章作成については「Latex」として書いていますが、今思えばここは「文書作成」という項目でまとめるべきだったかもしれません。博士・ポスドクであれば、投稿論文や博士論文といったロジカルな文書作成の経験を書くことができるでしょう。観測提案や学振などの予算獲得の申請書を書いたことがあればそれも含めてロジカルな文書作成の経験があると書いてあげると良いかもしれません。

プレゼンについては当たり前過ぎて書きませんでしたが、国内外の学会や研究会で研究発表を頻繁にやっていたことを書いても良かったかもしれません。「文書作成・資料作成」のような項目で文書作成と一緒にまとめたらしっかりアピールできたと思います。一方で、文書作成や資料作成については、重要なスキルではあるものの、データ分析やプログラミングに比べると差別化が難しいのでほどほどにしておくべきです。1–2行でさらっと書くぐらいが良いでしょう。



Conclusion | まとめ

最後までご覧いただきありがとうございます!
職務経歴書「活かせる経験・知識・技術」欄の書き方についてお話しました。

活かせる経験・知識・技術の欄では、研究で培ってきたスキルや経験(研究コアスキル)を具体的にアピールします。研究でやってきたことの中から民間企業でも活かせそうなキーワードを引っ張ってきて書き出しましょう。
専門分野の研究をしていると「民間企業で活かせる経験やスキルなんてない」と思い込みがちですが、実際には研究でやってきた多くのことを活かすことができます!データサイエンティストであれば分析手法などのキーワードを使って接点を探すことで、博士・ポスドクとしての強みを具体的に書くことができます。参考にしてみてください!

以上「転職レシピ | 天文学ポスドクの応募書類作成術3: 職務経歴書の「経験・スキル」欄に研究コアスキル盛り込む方法」でした!
またお会いしましょう!Ciao!



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