天文学系データサイエンティストの略歴2|民間コンサルタントとしての業務ポートフォリオ

人工衛星の軌道計算と加速度センサーデータの例 自己紹介
民間コンサルの業務でも研究で培った経験をフル活用します

Ciao!みなさんこんにちは!このブログでは主に
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の4つのトピックについて発信していきます。

今回は著者、The Silkwormsの天文学系データサイエンティストとしての略歴シリーズの第2弾!
天文学系データサイエンティストが民間コンサルティングファームに転職後、どのような業務を行っているのか、その概要をお話します。

略歴シリーズ第一回では、天文学者とプログラミングの関係をお話し、私が天文学者としてどのようにプログラミングを身につけてきたかをお話しました。
言うなれば、第一回が過去編で、今回は現在編ということになります。
天文学系データサイエンティストって、民間企業(コンサルティングファーム)でどんな仕事しているの?という疑問にお答えします!

Abstract | 研究の経験を最大限活かして活躍

私は民間コンサルティングファームでは、データ解析を起点としたコンサルティング業務(約8割)と研究開発業務(約2割)に従事しています。
コンサルティング業務では、統計学やプログラミングなど、研究で培ってきたスキルを活かすことで、これまで馴染みのなかった金融などの分野でも業務をこなすことができます。
一方の研究開発業務では、宇宙関係の研究を中心にスマートフォンの加速度・ジャイロセンサーを活用した研究開発も行っています。
コンサルティング、研究開発どちらの種類の業務でも、研究で培ってきた経験・能力を最大限活用しています。

Background | 民間企業への転職の概要

まずは天文学のポスドク(博士研究員)だった私が民間企業に転職するところからお話しましょう。
転職の背景や動機、詳しい経緯などは別途、転職レシピの記事でお話するつもりです。
ここでは概要だけをお話します。

ポスドクから民間企業へのキャリアチェンジ

私は天文学の博士を取得後、国立大学でポスドクを1年程度行った後、民間の大手コンサルティングファームに転職しました。
研究者として培ってきた能力を最大限発揮できるのは研究者としてのキャリアです。
これは間違いありません。なので、天文学の研究自体は当然に続けたいとは思っていました。

一方で、研究者として成り上がって、大学や研究機関の中で教授として研究室を持ち、その運営を行っていくという将来像には心が湧かなかった自分がいました。
というのは半分綺麗事で、金銭的に将来の見通しが立てにくい(要するにポスドクというポストは不安定で給料も低い)というのが一番の理由かもしれません。
ただ、せっかく研究者としてのキャリアを捨てるのだから、普通に民間企業に転職しておとなしく暮らしているだけではつまらないとも考えていました。

民間企業でやろうとしていたこと(転職当時)

さて、転職で使ったの職務経歴書と履歴書を引っ張り出して、当時の「今後の展望」を見てみます。
ざっくりとは、以下のようなことが書いてありました。

研究を通して得たデータ解析のスキルをビジネスで活用する:
天文学の研究を通して得られた, データ解析の経験やスキルをビジネスの世界で活かして業績をあげ, 人々の暮らしや社会を良くすることに役立てたいと考えております.
今後はビジネスの経験を積み, データ解析のスキルを駆使して会社の業績に貢献したいと考えております.

同じ職務経歴書と履歴書を何社にも出すので、抽象的なことが書いてありますが「会社の業績に貢献したい」といったところがピュアです笑
当然、「御社に入りたいです!」という書類なので「どうやって御社に貢献できるか」ということが書かれています。
現実には、私は会社の環境や資本を使ってやりたいことができ、会社は私の能力を生かして収益を上げることができているのでWin-Winの関係を築くことができています。

研究で培ってきた能力をビジネスに活かして面白いことがしたいと考えていましたが、実際そうなっています。
具体的にどのように活かせているかは別に取り上げるとして、転職後の会社は幸いにして、私がやりたいことを応援してくれ、私が能力を発揮できる環境を整えてくれています。
周りにも助けられ、研究で培った能力で無双しています!笑

Contents | 民間企業における私の業務ポートフォリオ

民間企業における私の業務ポートフォリオ(構成)は、現在では

  • データ分析起点のコンサルティング: 80 %
  • 宇宙関連・IoT関連の研究開発: 20 %

となっています。
私が勤めている民間の大手コンサルティングファームですが、いわゆる外資の戦略系ファームのような「アップ or アウト」(成り上がるか辞めるか)のような雰囲気はありません。
また、部署としても、目先の売上を上げることではなくて、まだ研究開発段階にある技術を数年かけて社会実装していこうとするチームです。

少し具体的に(ただし公開して問題のない範囲で)私の業務概要をご紹介します。

1. スマートフォンセンサのデータ分析業務 | 100 %(入社時) → 0 %(現在)

入社当初、スマートフォンに搭載された加速度センサー、ジャイロセンサーのデータ分析業務が割り当てられました。

  • データの質・量的にプログラミング必須
  • 物理学、数学、統計学の知識必須
  • 仮説検証なので、学術研究のプロセスが生きる

という業務の特性が私の能力特性にマッチしていました。
会社としてはこの業務のために私を採用したようなものでしょう。

加速度センサーとジャイロセンサーのデータを分析すると、例えば人間の動きや方向を推定することができます。
スマートフォンにはこれらのセンサーが搭載されているので、そのデータを分析することで、スマートフォンの持ち主がどのように移動したかがわかります。
MaaS(Mobility as a Service)という、近年ホットなビジネス分野での活用が期待されているのです。

この業務では、実証実験のデータ解析や説明資料の作成を行う機会があり、研究の経験をほとんどそのまま活かすことができました。
残念ながら私が配属されてすぐに業務規模の縮小があったため、私自身はあまり関われずに終わりました。
研究でも民間企業でも突然の打ち切りはよくあることです。
1-2ヶ月というかなり短い期間でいしたが、研究の経験を活かして爪痕を残すことができました。

2. 金融機関の信用リスク関係業務 | 0 %(入社時)→80 %(現在)

入社当初は全く興味がありませんでしたが、金融機関へのコンサルティング業務が最近では業務ポートフォリオの大部分を閉まることになっています。
銀行などの大手金融機関は大手民間コンサル会社のお得意様です。
案件も必然的に多いので、業務が回ってくる確率も高いのです。
天文学の研究しかやってこなかった私は、金融の「き」の字もわかっておらず、「とりあえずマネージャーと一緒に学びながらやってみてよ」と仕事を振られたときには戦々恐々でした。
なんせ「利息って何?」、「元本て何?」という状態でしたから笑

ただ、業務を進めていくと、金融関係の分析に統計学やプログラミングが思っていた以上に活かせることがわかってきました。
特に、天文学の観測では、統計学の手法を使って観測結果から結論を導き出します。
金融関係の分析も同じことで、銀行が持っているデータを観測し、それを統計学の手法で分析することで、何らかの結論や示唆を導き出します。

実は、金融と物理学や統計学は相性がよいのです。
特に素粒子物理学系の研究者出身で金融の分析を始めた人々が定着させた、クオンツ(Quants)という職業が存在することからもわかります。
入社当初は全く興味がなかった金融関係の業務ですが、ここでも研究の経験を活かせたことで、活躍することができています。

3. スマートフォンセンサを用いた研究開発業務 | 不定期

スマートフォンセンサを用いたコンサルティング業務だけでなく、研究開発業務もたまに行っています。
実は「1. スマートフォンセンサのデータ分析業務」をやる中で、個人的な興味から研究を行っていました。
その内容をチームメンバーに話してみたところ、「面白そうだから進めてみて」となって私の手が空いたときに進めています。

iPhoneを始めとするスマートフォンには、加速度センサやジャイロセンサをはじめ、気圧計や方位磁針などさまざまな小型センサが搭載されています。
「自分でデータを取ってみたいな」と思い、Swiftというプログラミング言語でiPhoneアプリを作り、これらのセンサーデータをcsvで書き出せるようにしました。
このデータをつかって色々な分析をしてみたところ、チームの注目を集めたわけです。

  • 装置を作って、
  • 実験でデータを集めて
  • 分析して示唆をだす

なので、天文学の装置開発と観測研究と同じフレームワークです。
このフレームワークが活かせたことで高く評価されたこともありますが、それ以上に主体的に取り組む姿勢(研究者としては当然だが)が評価されています。
上司や管理職を含め、周囲に「こいつは何かやってくれそう」という認識を与えられると、やりたいことをやらせてもらえるようになります。

自作アプリで取得したiPhoneの加速度センサーのデータ。iPhoneをポケットに入れてジョギングをしたときのデータだったと思う。

4. 宇宙関係の研究開発業務 | 0 %(入社時) → 20 % (現在)

実は宇宙関係の研究開発業務も行っています。
民間に転職したとき、宇宙の研究は個人の時間でやろうと思っていたので、会社の中でやろうとは思っていませんでした。
たまたまチーム内で「3. スマートフォンセンサを用いた研究開発業務」の発表を行う中で、「宇宙関連でこんなアイデアがある」というスライドを1枚入れたのがきっかけで、宇宙関係の研究開発業務がスタートしました。

人工衛星の軌道計算を行った例。赤や白の丸が人工衛星の位置で、その両サイドの帯の範囲が人工衛星で監視できる地上の範囲(何の人工衛星だったかは忘れた)。

自分でやりたいことを発信できる環境を整えて発信していくと、「それ面白そうだね、ぜひ進めてください」と言ってもらえるようになります。
こういった社内でのセルフブランディングについては、別途転職レシピでまとめていきますので、ご期待ください。

Conclusion | まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございます!
天文学系データサイエンティストが民間コンサルティングファームで行っている業務の概要をお話しました。
「データ分析を起点にしたコンサルをメインに、研究開発もやってるのね」ぐらいに思っていただければ良いです。

転職前には馴染みのなかった金融などの領域でも、研究で培ってきた能力を活かすことで活躍することができています。
このブログでは、研究出身のデータサイエンティストが民間企業でどのように活躍できるかについて、今後も発信していきます。

以上、「天文学系データサイエンティストの略歴2|民間コンサルタントとしての業務ポートフォリオ」でした!
またお会いしましょう!Ciao!

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